腱縫合術後の予後を決める因子として、筋肉や腱の加齢による変性があげられるが、筋肉や腱の変性と加齢の関連について検討した報告はない。本研究では全身の筋肉減少症であるサルコペニアに注目し、老化モデルマウスを使用して、アキレス腱修復後の筋・腱の脂肪変性について検討を行った。 実験モデルとして40週齢のsenescence accelerated mouse P6(SAM-P6)と、コントロール群としてsenescence resistant mouse (SAMR)を使用した。右足のアキレス腱を切離し、即時に修復した。2週間後に筋重量の測定、組織学的解析、コラーゲンや脂肪分化関連遺伝子の発現について検討を行った。 腱での3型コラーゲンの発現はSAM-P6群でSAMR群に比べて低い一方で、腱の主成分である1型コラーゲンの発現には差を認めなかった。組織学的には、両群とも腱の表層に脂肪滴の発現を認めた。また、腓腹筋の湿性筋重量はSAM-P6群で114㎎でありSAMR群では131㎎であった。脂肪分化関連遺伝子はSAM-P6群でコントロール群より高値であり、組織学的にSAM-P6群でより多くの脂肪滴の発現を認めた。 腱におけるコラーゲンの発現バランスの変化や、筋肉の脂肪変性がサルコペニアのモデルの1つである、老化マウスでは認められ、これが臨床成績を不良にする原因の1つであると考えられた。
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