骨折などの整形疾患において、BMP等の成長因子は治癒に非常に効果的に働く。しかし,これらの機能を十分に発揮させるには,まず患部にそれらの薬剤を留め,必要に応じて効果的に徐放させる技術を開発しなければならない。本研究では,理化学研究所と岡山大学で共同開発した3つのシーズ,すなわち①進化分子工学の手法を用いて創製する結合性改変成長因子,②リン酸化プルラン,③可視光化型ゼラチンなどの先端接着材料を効果的に用いることにより,骨粗鬆症患者の骨折予防や骨折治療に有効な新しい骨組織再生・再建技術を開発する。 生体内でコラーゲンとファイブロネクチンは結合しているが,この結合に実際に関わっている配列がCBDであり,6個のモジュールで構成される。CBD-BMPは両者を融合させたタンパク質で,コラーゲン結合能を有したまったく新しい薬剤である。 昨年度はこのCBD-BMP4を用いて結合性改変BMPの生体内定着安定性,基材定着安定性の評価を行い,CBD-BMP4はBMP4単独よりもin vitroおよびin vivoともに明らかに良好な定着安定性を示した。また,マウスの大腿骨における骨再生能評価を行った。マイクロCT,fluorescence images,組織学的検討でCBD-BMP4はBMP4単独よりも良好な骨再生能を示した。 本年度はさらに骨欠損部環境での骨再生能と,より大型動物での生体内評価を行うため,頭蓋骨に骨孔を作成したマウスと,ウサギの大腿骨にCBD-BMP4とBMP4を投与し、骨再生能を比較した。ウサギにおいてはコラーゲンスポンジをscaffoldとして用いた。いずれにおいてもCBD-BMP4投与群で有意に良好な骨再生能を認めた。また,マウス大腿骨を用いたモデルにおいて,骨形成マーカーの発現をreal-time PCRで評価すると,ALPやosteocalsinにおいてCBD-BMP4投与群で有意に高い発現を認めた。
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