【目的】脊髄後角TRPA1/M8の生理的役割及び、神経障害性疼痛における役割についてin vivo パッチクランプ法を用いて電気生理学的に解析した。 【結果】TRPA1作動薬であるAllylisothiacyanete(AITC)、TRPM8作動薬であるmentholとも灌流投与により自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)の振幅・頻度の増加を認めた。TRPA1の陽性率は52.9%(n=36/68)、TRPM8の陽性率は40%(n=21/53)であった。また、自発性抑制性シナプス後電流(sIPSC)の振幅・頻度の増加も認めた。EPSCとIPSCの作用時間に関しては、IPSCの方が優位に長かったことから抑制性作用がより強く働いていることが考えられたため膜電位変化の解析を行ったところ、TRPA1/TRPM8活性によって過分極を示した。これらの結果から、TRPA1/TRPM8活性は抑制性の働きが強いことが示唆される。末梢刺激に対する作用に関して、正常ラットでTRPA1やTRPM8によって脊髄後角細胞を興奮増強させた場合、末梢組織への刺激・疼痛刺激による誘発EPSC(evoked EPSC)の増強はともに非灌流投与時より抑制された 【結論】脊髄後角TRPA1/TRPM8は抗侵害性作用を示すことが明らかになった。今後、脊髄後角TRPA1/M8受容体は新しい鎮痛薬ターゲットになり得る。
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