研究課題
進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、筋組織内で異所性に骨形成が生じる難治性疾患で、骨形成に重要な役割を担うBone Morphogenetic Protein(BMP)の受容体であるALK2の変異により発症する。我々は、in vitroの解析からこの変異ALK2がBMPのもう1種類の受容体(II型受容体)によってリン酸化を受けやすく、BMP非存在下でも細胞内シグナルを活性化することを見出した。そこで本申請課題では、ソノポレーション法を用いて、BMP受容体や下流の情報伝達分子の遺伝子導入による骨誘導活性を評価できる新たなin vivoの実験系を確立し、FOPの発症メカニズムの解明や、生理的な骨形成に重要な分子メカニズムの解明を目指す。本年度はソノポレーションを用いたBMP受容体や下流の情報伝達因子の遺伝子導入による新たなin vivoの骨誘導実験系を確立するため、まず野生型マウスの下腿骨格筋に対して、ソノポレーションによりFOPで見出された変異BMP受容体(ALK2)の遺伝子導入を行うことを試みた。骨形成因子(BMP2)発現ベクターを用いた骨誘導実験ではpCAGGS-BMP2ベクターを用いた群で骨形成を誘導できた。一方、pcDEF3-BMP2ベクターを用いた群では骨形成が誘導できなかった。またGFP発現ベクターを用いた実験では、pCAGGS-GFPを用いた群では対象の筋組織にGFPの発現が確認できたが、pCDEF3ベクターを用いた群では、微弱なGFPの発現に止まった。
3: やや遅れている
これまでの我々がin vitroにおいて行ってきた実験では、pCAGGSベクターよりもpCDEF3ベクターで導入遺伝子の良好な発現が確認されており、筋組織に対するin vivoソノポレーションにもこのベクターを応用する予定であった。しかしながら、in vivoソノポレーションではpCAGGSベクターの発現の方が優れているという結果となった。このため、当初予定したベクターをそのまま使用することが出来なくなり、進捗が遅れた。
本研究計画で当初から準備していたpcDEF3ベクターのコンストラクトをpCAGGSに移し換えた上で、今後の実験を行っていく必要があるため、現在サブクローニングを行っている。サブクローニングが終了し次第、野生型マウスの下腿骨格筋に対して、ソノポレーションによりFOPで見出された変異BMP受容体(ALK2)の遺伝子導入を行い、経時的に4週後までの骨誘導活性を評価する。受容体の共発現で骨誘導が認められない場合、ALK2のリガンドとなるBMP遺伝子の共発現や、筋損傷を誘発するヘビ毒投与の併用などを検討する。また、我々が最近構築した構成的活性型Smadをそれぞれ筋組織に遺伝子導入し、各Smad経路の骨誘導活性について比較検討する。また、BMPのSmad経路の下流ではOsterixやRunx2の発現が誘導されることから、これらの転写因子の遺伝子導入による骨誘導活性についても検討する。Smad経路単独で骨誘導活性が認められない場合、BMP受容体との共発現でSmad以外の経路を活性化した条件を併せて解析する。
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