研究課題/領域番号 |
26861215
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
今井 洸 東海大学, 医学部附属病院, 臨床助手 (60724672)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 脊髄損傷 / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 再髄鞘形成 / アミロライド |
研究実績の概要 |
損傷脊髄において、再髄鞘形成に関わるオリゴデンドロサイト前駆細胞は活発に増殖するが、分化することなく多くが細胞死へ至ることが報告されている。細胞死の要因の1つに小胞体ストレスがある。利尿薬であるアミロライドは小胞体ストレス応答能の増強効果が報告されている薬剤である。本研究では、アミロライド投与で生存したオリゴデンドロサイト前駆細胞が、成熟オリゴデンドロサイトへと分化し再髄鞘形成や遺残症状の軽減にも寄与しうるかを検討した。 脊髄圧挫損傷モデルラット(IHimpactor、T10レベル、200Kdyne)を作成し、アミロライド投与群(A群)、PBS投与群(C群)の2群で比較した(損傷24時間後より14日間、各10mg/kg/day、腹腔内投与)。損傷後の細胞分裂のtracingを目的として、BrdUを投与(損傷後3日間12時間毎、50mg/kg/回、腹腔内投与)。後肢機能評価としてBBBscore(n=14)、von Frey test(n=5)を用いた。オリゴデンドロサイトの生存・分化をBrdU+NG2(OPC)、BrdU+APC(成熟オリゴデンドロサイト)の二重免疫染色を用いて、免疫組織学的に評価した(n=5)。髄鞘形成の評価として、Western blot(myelin basic protein:MBP、n=5)、電子顕微鏡を用いてミエリン鞘/軸索直径比(G-ratio)を測定した(n=3)。 BBBscoreでは損傷後17日目以降で有意にA群で高く(損傷後17日,p<0.05)、それは観察期間中継続して認めた(損傷後56日,p<0.01)。Von Frey testでは、損傷後14日においてA群で有意に刺激反応加圧力の増加を認め、痛覚過敏の改善を認めた(p<0.05)。免疫染色では損傷後14日でA群においてBrdU陽性NG2陽性細胞は有意に高値であった(p<0.05)。損傷後56日でA群においてBrdU陽性APC陽性細胞は有意に高値であった(p<0.05)。Western blotにてMBPは、損傷後28日、56日においてA群で有意に高かった(p<0.05)。G-ratioは、損傷後28日で比較したが、A群、C群で明らかな有意差は認めなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、本年度でBBBscale、von Frey test、BrdU+NG2、BrdU+APCの二重染色による免疫組織学的評価、Myelin basic proteinを指標としたWestern blottingによる髄鞘評価を行うことができた。それぞれ予定サンプル数での比較も行うことができた。結果に関しても当初の仮説通り、アミロライド投与によって脊髄損傷後の小胞体ストレス誘導性アポトーシスが抑制され、損傷後増殖したオリゴデンドロサイト前駆細胞が生存し機能的な再髄鞘形成へ寄与する可能性が示唆される結果であった。
|
今後の研究の推進方策 |
電子顕微鏡における再髄鞘形成の評価は損傷後28日のみであった。同時点では明らかな有意差を認めなかったが、再髄鞘形成の時間差があると仮定しており、損傷後56日のサンプルでも電子顕微鏡での観察、評価を行う予定である。 また、アミロライドの小胞体ストレス誘導性アポトーシスへの作用機序を解明していく。アミロライドは諸家の報告によるとacid-sensing ion channel(ASICs)、ナトリウム-プロトン(Na-H)交換輸送体、Na-Caイオン交換輸送体の抑制が報告されており、この作用により細胞内の酸塩基やCaイオンの恒常性が保たれ、ERstress応答能が増強され、脊髄損傷での二次傷害の軽減につながるのではないかと考える。免疫染色やWestern blot等を用いた上記channelの変化を比較する予定である。 上記結果を含め、研究成果をまとめ論文投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前任研究者から使用している脊髄損傷用機器、実験物品を使用することができたため、当初の予定よりも使用金額が少額となり次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験計画として電子顕微鏡による観察や、ERstress経路の解析を予定しており、主に実験物品、試薬の購入に充てる予定である。
|