損傷脊髄において、再髄鞘形成に関わるオリゴデンドロサイト前駆細胞は活発に増殖するが、分化することなく多くが細胞死へ至る。我々は小胞体ストレス誘導性アポトーシスに着目し、利尿薬であるアミロライドによる小胞体ストレス応答能の増強、グリア細胞のアポトーシス抑制を証明した。本研究では、アミロライド投与で生存したオリゴデンドロサイト前駆細胞が、成熟オリゴデンドロサイトへと分化し再髄鞘形成や後肢機能障害の軽減にも影響しているかどうかを検討した。 脊髄圧挫損傷モデルラットを作成し、アミロライド投与群(A群)、PBS投与群(C群)の2群に分け、損傷24時間後より14日まで腹腔内投与した。後肢運動機能評価としてBBBscore(n=14)、疼痛関連行動評価としてvon Frey test(n=5)を用いて測定した。オリゴデンドロサイトの生存・分化をBrdU+NG2、BrdU+APCの二重免疫染色を用いて、免疫組織学的に評価した(n=5)。髄鞘形成の評価として、Western blotting(myelin basic protein:MBP、n=5)、電子顕微鏡を用いてミエリン鞘/軸索直径比(G-ratio)を測定した(n=5)。 BBBscoreでは有意にA群で高く(損傷後17日,p<0.05)、von Frey testでは、損傷後14日においてC群と比較し、A群で有意に刺激反応加圧力の増加を認めた(p<0.05)。免疫染色では損傷後14日でA群はC群と比較し、BrdU陽性NG2陽性細胞は有意に高値であった(p<0.05)。損傷後56日でA群はC群と比較し、BrdU陽性APC陽性細胞は有意に高値であった(p<0.05)。Western blottingにてMBPは、損傷後28日、56日においてC群と比較し、A群で有意に高かった(p<0.05)。G-ratioは、損傷後28日でA群はC群と比較し、有意に高値であった(p<0.05)。 アミロライドにより損傷後増殖したオリゴンドロサイト前駆細胞は生存、分化し機能的再髄鞘形成に寄与する可能性が示唆された。
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