研究課題/領域番号 |
26861217
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
寺村 岳士 近畿大学, 医学部附属病院, 講師 (40460901)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / ダイレクトリプログラミング / 上皮間葉転換 / 転写因子 / TGFβシグナル |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞(MSC)は、現在の再生医療においてほぼ唯一実用可能な幹細胞として普及しつつある。様々な疾患において組織再生、免疫・炎症抑制、サイトカイン分泌など幅広い効能を示し、今後の期待は大きい。一方で、ドナーの背景により移植基準に到達しない例が散見されるなど、安定的に培養する系やDifined-cultureの確立が望まれている。しかしながら、MSCにおいては基礎的な情報が乏しく、間葉系幹細胞が分化するメカニズムや必要な転写因子などは依然不明である。本研究では、患者細胞からMSCへとダイレクトリプログラミングする系を確立することを目的としている。これを達成するためには、これまでほとんど未解明であったMSCの成立に必要な分子メカニズムを明らかにする必要がある。申請者は、2011年-13年の科研費研究で実施した「iPS/ES細胞からのMSC誘導」において、MSCの発生時にはEMT現象を伴うことを観察していた。本研究ではこの知見をもとにEMT因子を用いたMSCの誘導を試みた。これまでに4つの実験を実施し、①MSC分化初期に生じるカドヘリンの変化に着目し、Nカドヘリンへの切り替わりはbFGFシグナルの経路を強化するために必要であること(Scientific Reports誌に掲載)、②EMTコア因子であるTwistの役割と相互作用分子の探索、同定(Arthritis Rheumatology誌に投稿中)、③EMTトリガーであるTGFbシグナルがMSCの維持に重要であり、TGFbシグナルのプライマリ・エフェクターであるTAK1が重要な役割を果たすこと(投稿準備中)を発見している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、最初2年間にEMT関連転写因子を用いたダイレクトリプログラミングの実施を予定していた。計画通り、初年度に線維芽細胞からのMSC様細胞の誘導に成功したが、状態が不安定であり、これを改善するためには詳細な分子メカニズムを理解することが必須であると結論づけた。そのため初年度途中から分子メカニズムの解明を目指した研究に取り組んでいる。今年度は1報の学術論文の出版、1報の学術論文の投稿、2件の特許成立、5件の学会発表を行った。次年度は本年度に作成したTAK1ノックアウト細胞株を用いてさらに詳細な解析を実施するとともに、TGFβシグナルの重要性に着目したMSC安定培養の改良に取り組みたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、平成28年度にはダイレクトリプログラミングによりヒトMSCの誘導を計画していた。初年度にヒト線維芽細胞、ヒト器官上皮細胞(米国で実施)からのMSC様細胞の出現を確認したが、前述のとおり極めて不安定で、根本的な改良が必要であることが示唆された。平成28年度には初年度途中から実施している分子メカニズムの解明を継続するとともに、現在明らかにしつつあるTGFβシグナルの必要性を明確にし、培養系の改良に結び付けたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の大半をin vitroでの解析にシフトしたこと、それに伴い動物実験を縮小したことから予算執行計画を見直した。来年度には動物実験に替えた細胞の解析を予定しており、同実験に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度発見した分子について、網羅的解析を予定しており、それに係る試薬代として使用する。
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