研究実績の概要 |
局所麻酔薬中毒に対する lipid therapyの有効性が多く報告されている。その効果の機序と推測されているlipid sink効果には、局所麻酔薬の脂肪親和性が関与している可能性がある。そこで脂肪親和性の高いレボブピバカインと親和性の低いロピバカインによる心停止に対する脂肪乳剤投与の効果をラットで比較検討した。セボフルラン麻酔下に気管切開カニューレ留置後、大腿動静脈カテーテルを挿入し皮下トンネルを作成した。麻酔覚醒2時間後、持続的な心電図と血圧監視下で、0.25%レボブピバカインまたは0.2%ロピバカインを2 mg/kg/分で持続静注した。最初の痙攣が起こるまで、および脈圧が0 mmHgになるまでの局所麻酔薬の投与量を測定した。脈圧が0 mmHgになった時点で局所麻酔薬の投与を停止し、直ちに純酸素で人工呼吸、心臓マッサージを行った。同時に30%脂肪乳剤5 ml/kgを静注後、0.5 ml/kg/分で持続静注した。心臓マッサージはrate-pressure productが局所麻酔薬投与前の20%になった時点で中止した。局所麻酔薬投与前の動脈血液ガス、平均血圧、心拍数に群間差はなかった。最初の痙攣が起こるまで、および脈圧が0 mmHgになるまでの局所麻酔薬の投与量で群間差はなかった。脈圧0 mmHg時、ロピバカイン群およびレボブピバカイン群の平均血圧と心拍数で差はなかった。蘇生開始後2, 3, 4, 5, 10分の平均血圧はロピバカイン群よりレボブピバカイン群で高かった。心拍数は蘇生開始後5分でロピバカイン群よりレボブピバカイン群で多かった。痙攣が起こるまで、および心停止になるまでのレボブピバカインとロピバカインの投与量に差はなかった。局所麻酔薬による心停止からの蘇生において、脂肪乳剤の投与はロピバカインよりもレボブピバカインで有効であった。
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