研究実績の概要 |
局所麻酔薬中毒に対する脂肪乳剤投与はロピバカインよりもレボブピバカインで有効であることを報告した(日本蘇生学会,2012年)。今回、脂肪乳剤投与の効果を脂肪乳剤投与群と非投与群(対照群)で比較検討した。 【方法】ラットをセボフルラン麻酔下に気管切開カニューレ留置後、大腿動静脈カテーテルを挿入し皮下トンネルを作成した。麻酔覚醒2時間後、0.25%レボブピバカイン(n=12)または0.2%ロピバカイン(n=12)を2 mg/kg/分で持続静注した。脈圧が0 mmHgになった時点で局所麻酔薬の投与を停止し、純酸素投与下で人工呼吸と心臓マッサージを行った。脂肪乳剤投与群(n=6)では、同時に20%脂肪乳剤5 ml/kgを静注後、0.5 ml/kg/分で持続静注した。対照群(n=6)では同量の生理食塩水を静注した。心臓マッサージはrate-pressure productが局所麻酔薬投与前の20%になった時点で中止した。結果は平均±標準偏差で示し、P <0.05を有意とした。 【結果】局所麻酔薬投与前の動脈血ガス分析値、脈圧0 mmHg時の平均血圧および心拍数で群間差はなかった。レボブピバカインでは、蘇生開始後2, 3, 4, 5, 10分の平均血圧は対照群より脂肪乳剤投与群で高かった (10±5 vs 22±6, 13±6 vs 31±5, 18±15 vs 38±13, 22±24 vs 54±32, 75±86 vs 184±15 mmHg)。しかし、ロピバカインでは有意な群間差はなかった。心拍数は、レボブピバカインでは、蘇生開始後4, 5, 10分で対照群より脂肪乳剤投与群で高かったが、ロピバカインでは群間差はなかった。 【結論】局所麻酔薬中毒による心停止からの蘇生において、脂肪乳剤の投与はレボブピバカインでは有効であったが、ロピバカインでは有意な効果がみられなかった。
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