当初の計画通りに実験が進行し平成27年度に終了した。重度ARDSに対して、PEEPが不十分である時は、自発呼吸努力が強くなった。その結果、経肺圧は上昇し、CT上tidal recruitmentを増加させた。それに対して、適切な (高い)PEEPを付加することで、自発呼吸努力を減らすことができ、また経肺圧の上昇も防ぐことができた。。これは、呼気終末肺容量を増加させて横隔膜のradius of curvatureを変化させたことによると思われる。結果、CT上、肺含気分布の改善、tidal recruitmentの軽減につながった。また組織学的検索でも肺傷害の程度が小さかったことを確認した。 現在のところ、重度ARDSに伴う強い自発呼吸努力の害を軽減させるためには筋弛緩しか有効な治療手段がなかった。しかし筋委縮の副作用などから筋弛緩の使用はできるだけ避け、他の治療法を見出すことは急務であった。 従って、今回の結果は重度ARDS患者の人工呼吸管理に大きな進歩をもたらすと思われる。筋弛緩を使用せずとも、PEEPを付加するだけでARDSに伴う強い自発呼吸努力を減少させることができた。結果組織学的な肺傷害の減少にもつながった。 次の目標は、このアイデアを臨床試験で確かめることである。
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