研究課題/領域番号 |
26861232
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
大槻 明広 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (00379637)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オピオイド / 予後 / 腫瘍増殖 |
研究実績の概要 |
モルヒネを代表とするオピオイドは、手術やがんの痛みの管理に必要不可欠な薬剤である。一方で、オピオイドは、がん細胞の性質(増殖効率、細胞死、遊走性など)に影響を与えることが、細胞レベルや動物実験の結果あるいは、ヒトでの臨床データを解析した結果から報告されている。しかしながら、これらの報告の結果は、報告によってさまざまであった。オピオイドが、がん細胞の増殖効率にどのような影響を与えるのか、またその機序はどのようなものかを検討するのが、当研究の目的である。当該年度の研究結果から、培養ヒトがん細胞株を用いて、子宮がん細胞、卵巣がん細胞、大腸がん細胞、扁平上皮がん細胞、肺がん細胞、乳がん細胞に、臨床使用レベルを考量して、数種類のオピオイドを添加して、48時間培養を行ったところ、増殖が促進される細胞とそうでない細胞があること、また、濃度によって、細胞増殖に対する影響が変化する場合があることを観察した。このことは、がん細胞の種類によっては、オピオイドが生命予後に影響を与える可能性があることを示唆している。今後の研究で、その機序が解明されれば、手術時やがん性痛の症状緩和に用いる麻薬の種類を、患者ごとにもっとも適したものに変更することが可能性かもしれない。がん細胞のオピオイドに対する反応の差が、どのような原因で生じるかについて、一つには、がん細胞の細胞膜表面のオピオイド受容体の発現量が、細胞株間で差があるためである可能性が考えられる。今後は、この細胞株間での差と各細胞株でのμ、δ、κなど複数あるオピオイド受容体mRNAの量を比較して、両者にどのような関係性があるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、培養がん細胞にオピオイド処理をして増殖速度、細胞死がどのように変化するかを細胞株間で比較して、細胞周期、細胞死に関与する遺伝子発現の変化との関係を解析する予定であったが、培養細胞の培養条件によって、オピオイド処理による細胞増殖速度の変化のばらつきが大きく、検討条件を最適化する必要があった。現状もオピオイド処理をするときの条件検討中である。そのため、オピオイド処理したのちの遺伝子変化を、腫瘍細胞間で比較するまでには、至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
オピオイド処理する場合の培養条件を最適化してから、遺伝子発現解析を行う必要がありますが、それまでに、ベースラインの遺伝子発現解析をおこなって、各がん種での差の比較を行うことで、実験日程を短縮する予定です。培養条件の決定に関しては、これまでの論文報告を参考に、条件決定を行う予定です。その後、遺伝子発現の状況を、オピオイド添加の有無や細胞株間で比較していく予定です。遺伝子発現量の比較については、もっとも安価で迅速に比較が可能であるリアルタイムPCR法で、まずは行うこととしております。
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