研究課題
周術期における虚血再灌流障害による炎症反応や細胞死は、術後合併症や予後と相関するため、虚血再灌流障害の影響を最小限にする麻酔管理を行うことが重要である。細胞外ヒストンは、障害時に懐死細胞、好中球等から放出され、虚血再灌流障害において、生体由来催炎症性物質(damage-associated molecular patterns : DAMPs)として働くと報告されている。虚血再灌流障害のモデルであるマウス、ラットを用いて、DAMPsの一つであるヒストンについてその動向を検討し、ヒトにおいては肝切除術を虚血再灌流障害のモデルとして虚血手技であるプリングル前後での血中ヒストンの動向を同様に検討した。また敗血症では微小循環障害を認めることが知られているが、敗血症モデルマウスである盲腸結紮穿刺(CLP)マウスにおいてヒストンが、壊死細胞と好中球、どちらの由来であるか検討した。まず、肝切除術のプリングル後では、ヒストンが有意に上昇していた。次にCLPマウスにおいてSham群と比較して、ヒストンの一つである血中H3が上昇していた。さらに、両側大腿部をゴム輪にて結紮し駆血する下肢虚血再灌流モデルにおいても検討したが、HMGB-1のみ有意な上昇を認め、ヒストンにおいては有意な上昇を認めなかった。次に敗血症モデルのCLPマウスを用いて行ったヒストンの由来の検討実験では、ヒストンの上昇を認めるが、その上昇は抗好中球抗体を用いると消失した。このことよりヒストンは、敗血症において好中球由来であることが示唆された。これら以上の結果より、肝臓や下肢の虚血再灌流障害においてヒストンは上昇傾向を示すことがわかった。また、敗血症においては、ヒストンは壊死細胞から放出されるよりもむしろ好中球に由来していることが示唆された。
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