吸入麻酔後に生じる術後認知障害は,手術後の生存率と生活の質に悪影響を及ぼすことが知られている。本研究では5分間という超短時間の吸入麻酔薬曝露モデルを作成し、遠隔期の文脈的記憶学習障害を生じ、また海馬におけるシナプス可塑性(長期増強現象)が抑制され、その基盤として知られているGluA1サブユニットを含むAMPA受容体のシナプス後膜への挿入現象が抑制されていることを発見した。今回の知見が、臨床上の吸入麻酔薬の使用法に与えるインパクトはきわめて大きく、吸入麻酔薬の安全な使用のために、投与濃度などの使用法と遠隔期の認知記憶能の変化についての臨床研究につなげていく必要がある。
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