近年、利用可能な新規抗凝固薬は経口薬、静注薬ともに増加している。これらの薬剤には、ワルファリンといった従来の薬剤に比較すると脳出血等の出血性合併症が少ないとされる。一方で、ひとたび出血が生じるとその臨床像は非常に重篤であり、またその急性拮抗薬は確立されていない。本研究では、血流環境下で形成された血栓を多面的に観察するで、新規抗凝固薬と血栓形成制御の相互関係を解明することを目的とした。 最終年度は、抗トロンビン薬および抗Xa薬による血漿検体をもちいた拮抗実験を、静的な凝血学的マーカー、および全血検体をもちいた流体下観察によりおこなった。ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバンすべての抗凝固薬に対して、各種拮抗薬は静的な凝血学的検査所見を改善することが示されたが、プロトロンビン時間は第7因子の影響を強くうけることから、トロンビン生成試験で得られる結果との相関が弱かった。一方で、流体下実験ではトロンビン生成量の増加に応じて、拮抗薬による血栓形成能の上昇が得られたため、フローチャンバー装置は新規抗凝固薬の拮抗時におけるモニタリングとして有用である可能性が示唆された。また、新鮮凍結血漿による拮抗はプロトロンビン時間等の検査所見は改善するが、動的な血栓形成能を十分に回復させないことも確認された。
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