研究課題/領域番号 |
26861242
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西和田 忠 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20649165)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 全身麻酔薬 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
全身麻酔薬による発達段階の脳に対する神経毒性をミノサイクリンが抑制するかについて初代培養細胞を用いてまず検討する予定であったが、初代培養細胞の分離培養が安定しなかったため、neuroblastomaの株化培養細胞であるSH-SY5Yを用いて検討した。SH-SY5Yはレチノイン酸によって分化誘導させて用いた。 まずミノサイクリン単独でviabilityの低下が引き起こされないかをMTTを用いて検討したところ、有意な値の変化(viabilityの変化)は認めなかった。次に全身麻酔薬のSH-SY5Yに対する影響を検討するために、過去の文献でケタミンを用いた報告が多いため、まずケタミンを暴露した。ケタミンを過去の文献を参考にした濃度で暴露させたが、最も低い濃度でもSH-SY5Yが大幅に死滅した。この現象がアポトーシスであるのか、ネクローシスであるのか、なぜ我々の研究室では大幅に死滅したのかは不明である。より低濃度のケタミンで研究を進めるべきか、ミダゾラム、プロポフォール、揮発性麻酔薬等の別の全身麻酔薬で研究を行うべきかを検討中であるが、臨床的には小児に対し頻用される全身麻酔薬はミダゾラムや揮発性麻酔薬であるので、現在ミダゾラムや揮発性麻酔薬の適切な濃度決定を行うべく、研究を行っている。ミノサイクリンにアポトーシスを抑制する作用がみられない場合、カルシウム拮抗薬やL-Carnitineを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初新生マウスからの初代培養神経細胞を用いる予定で、複数回キットを用いて分離培養したが、安定して分離培養できず、時間を要した。そのためneuroblastomaの株化培養細胞SH-SY5Yを用いた。当初の計画では、報告の多いケタミンでアポトーシスを惹起させ、ミノサイクリンを用いてそれを抑制できるかを検討する予定であったが、まず使用するケタミンが、培地の組成に関わるために出来るだけ濃度の高いものが必要であった。海外の文献では動物用のケタミンを使用していたが、麻薬指定となっているため、入手に時間を要した。また、ケタミンをSH-SY5Yに暴露させたところ過去の文献通りには行かず、試行錯誤を要した。このため計画が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
ケタミンによるSH-SY5Yに対するアポトーシス惹起は困難(大幅に死滅する)と考え、揮発性麻酔薬(セボフルラン、イソフルラン)、ミダゾラムで検討する。ミノサイクリンにアポトーシスを抑制する作用がみられない場合は、カルシウム拮抗薬やL-Carnitineを用いる。 揮発性麻酔薬、ミダゾラムでSH-SY5Yのアポトーシスが惹起できなかった場合、現在麻酔領域で神経毒性について問題となっている局所麻酔薬やモルヒネ等の麻薬による虚血耐性の低下に対し、その障害をミノサイクリン等が抑制できるかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Caspase 3 Activity Assay kit、JC-1 Mitochondrial Membrane Potential Assay kitを用いる段階に至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
Caspase 3 Activity Assay kit、JC-1 Mitochondrial Membrane Potential Assay kit、Western blot関連に用いる予定である。
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