最終年度では、術後認知機能障害患者のリクルートメントを行い、機能的MRIを用いて解析を行った。 全身麻酔後の術後認知機能障害をきたした患者9名、対照群の健常人10人に対して機能的MRIの撮像を行った。撮像専門施設でT1強調画像、安静時EPI画像を取得した。MRIの解析は当教室で実施した。解析専用のソフトウェア(MATLAB、SPM12、connなど)を使用し、画像前処理、興味のある領域の設定、及び領域間での機能的結合の計算を行った。 さらに、患者背景の調査を行った。既往歴、器質的脳疾患の有無、向精神薬の内服の有無を確認した。手術因子として、手術時間、麻酔時間、麻酔方法、術式を詳細に調査した。術後認知機能患者群については、認知機能障害が発生していた期間を患者ごとに測定し、記録した。 両群間での比較として、本研究当初の計画通り、Default Mode Network(DMN)を関心領域に設定し、DMNからの機能的結合について認知機能障害患者群、正常群で比較検討をSPM12を用いて行った。次に、安静時機能的結合と認知機能障害との関係性を調査することを目的とし、認知機能障害患者群を対象として、DMNを起点とした機能的結合の強度と、術後認知機能障害の期間及びその程度の強さとの相関性の検討をSPM12を用いて行った。 患者群と正常群との比較、あるいは相関性の検討の両方で、統計検定(多重比較補正)の際に有意差を見出すことができなかった。ただし、多重比較補正前では一定の傾向を特定することができた。 研究期間は終了したが、引き続き、関心領域を前頭葉に設定するなどの検討を行い、広く研究結果を広めることを考えている。
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