研究課題/領域番号 |
26861248
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
鵜澤 康二 杏林大学, 医学部, 助教 (30530703)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 末梢循環 / DSC / ボルベン / 脱血 |
研究実績の概要 |
麻酔や集中治療領域における微小循環生理の解明は必須である。当該研究の目的は、大量出血や敗血症等の様々な危機的状態に対する治療効果の判定やその正確な病態把握を微小循環レベルで可視化し、その内皮細胞機能を解明する事にある。患者危機的状態の主因である血管透過性については、細胞間相互作用により複雑に調節されており、大量失血時と敗血症時の血管透過性は異なっていると予想される。 H26年度の最大の成果は、マウスの脱血モデルや敗血症モデルの作成である。これまで、マウスの採血方法は確立されていたが、大量の脱血は難しく、脱血可能であっても、直後にマウスは死亡してしまい確立されたモデルは存在していなかった。輸液製剤の違いによる生命予後の違いやその末梢循環の違いを蛍光色素を用いて比較研究した。同様に敗血症モデルにおいてもおこなった。具体的には、 背側皮膚透明窓(DSC)を装着したマウス(BALB/c)に大腸菌由来リポ多糖(LPS)を2回投与し敗血症モデルとした(1回目2mg/kg,2回目は18時間後に1mg/kgをi.p.)。マウスを3群に分け、体重減少の50%量の6%HES130をiv投与(HES群、N=7)、同量の生理食塩水をiv投与(生食群、N=6)、投与なし(対照群、N=6)とした。その6時間後に平均分子量40kDaのFITC-dextranと同75kDaのTMR-dextranをiv投与し、末梢循環を生体蛍光顕微鏡で観察した。さらに同様に群分けされた急性出血モデル(60%脱血:Hb5前後、N=15)に関しても検討した。敗血症モデルでは、HES群で40kDa FITC-dextranの血管外漏出は最も低く、75kDa TMR-Dextranの漏出を有意に抑制した(P<0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス脱血モデルの作成に関して、安定的に生存可能な脱血方法の検討や脱血技術トレーニング等、想定した時間以上の時間を費やしてしまったため、それ以降の実験計画が大幅に遅れてしまった。しかし安定的に脱血できるようになった以降は、順調に実験は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は、両モデルにおける具体的な内皮細胞機能の解明のために、Rodamine 6Gを投与し白血球の吸着能の変化を比較し、その機能的な構造変化(グリコカリックス及び内皮細胞上部の層の構造)を電子顕微鏡と光学顕微鏡で撮影する予定である。さらに両モデルにALBを投与し、その微小循環を検討し、その有用性をさぐる。様々な重症病態時の内皮細胞の構造可視化は、世界的にも初めての試みでありかなりの困難が予想される。全てを1年で完結できない場合は、その一つの病態に集約し構造変化を撮影する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験モデルの作成に時間が費やされ、当初予定されていた学会発表や論文投稿に関する支出がなかった事が最大の原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に前年度分で、学会発表や論文投稿が予定されており、当初の計画通りの支出になる予定である。
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