研究実績の概要 |
麻酔や集中治療領域における微小循環生理の解明は必須である。本研究の目的は、大量出血や敗血症等の様々な危機的状態に対する治療効果の判定やその正確な病態の把握を微小循環レベルで可視化し、その内皮細胞機能を解明することにある。H26,27年度で、マウス敗血症モデルと大量出血モデルを作成し、各種輸液製剤による末梢循環や生命予後を比較した。敗血症マウスを以下のように3群に分けた。体重減少量の50%の6%HES130を静脈投与したHES群(N=7)、同量の生理食塩水を静脈内投与したNS群(N=6)、投与しなかったCon群(N=6)。その6時間後にFITC40kDa-dextranとTMR75kDa-dextranを投与し末梢循環を生体蛍光顕微鏡を用いてin-vivoで観察した。さらに同様に急性出血モデル(60%脱血モデル、Hb:5前後、N=5×3)に関しても同様に末梢循環を観察し、HESの輸液療法の有効性を血管透過性の観点から証明した。その後は脱血モデルに集約し、NS群とHES群の生命予後や血液データの比較を行い、マクロの観点から輸液製剤による重症病態の比較実験を行った。最終年度は、WGA-FITCを使用したグリコカリックスの定量化に取り組んだ。脱血モデルで各種輸液に対するグリコカリックスを含む内皮表層の厚みを比較検討した。HES群において、その厚みが回復した。この結果に関しては報告はないが、間接的にボルベンの内皮細胞保護作用の可能性を強く示唆した。現在、データの解析、マウスアルブミンの生成に取り組み、論文執筆する予定である。今後、各種重症病態時における内皮細胞機能解明に大きな助けとなるように今後さらに実験を進める。また、本研究の当初の予定であった電子顕微鏡の画像や白血球のローディングの補足まで本研究期間内に到達できなかったが、今後並行して取り組んでいく予定である。
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