研究課題/領域番号 |
26861254
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
濱崎 真一 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (60642890)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | HMGB1 / マクロファージ / 肝臓切除 / 再生 |
研究実績の概要 |
肝臓切除術症例の治療の目標は、術後の肝機能や再生の障害を防ぐことにある。肝機能障害は再生を抑制する。さらに、肝臓切除術症例は、糖尿病、動脈硬化症、虚血性心疾患などの生活習慣病を合併する割合が高く、術後の肝機能や再生障害が起こりやすくなる。近年、慢性炎症の原因因子として、damage associated molecular pattern molecules (DAMPs)があると考えられている。生活習慣病は慢性炎症であり、DAMPsが重要な役割を果たしている。DAMPsは、虚血後再還流後の肝機能や再生に関与していると考えられているが、その役割は未だに不明な点がある。DAMPsで最も研究されているHMGB1は、本来核内でDNAの修復などに役割を果たしているが、壊死組織や刺激を受けたマクロファージから放出され、サイトカイン様に作用して、炎症反応誘導効果を持つ。一方、近年、HMGB1の組織修復誘導作用が報告された。また、運動が肝臓切除術の成績向上を促すことが知られている。 申請者らは、脳虚血モデルラットで、voluntary exerciseが生存率と脳神経再生を誘導し、その機序にHMGB1が関与するという知見を得た。Voluntary exerciseによる肝再生についても検討している。マクロファージはM1型からM2型への転換によって、炎症組織障害から炎症抑制、組織修復へ切り替わるプロセスが知られている。申請者らはVoluntary exercise による肝再生モデルを用いてHMGB1、マクロファージの臓器再生への関与を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肝虚血後の血管新生が臓器保護の点で重要であり、HMGB-1やIL-18といった炎症誘導因子の血管新生効果を検討している。その結果、これらの因子はマクロファージの存在下で血管新生を促進することが分かった。また、肝再生を難しくしている基礎疾患に糖尿病があり、これについても基礎的検討を行っている。糖尿病の発症、合併症の進展にadvanced glycation end products(AGEs)が関与している。AGEs存在下のマクロファージの血管新生効果を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
虚血による術後組織障害から肝再生の誘導に転換する機序には、肝再生因子によるM2細胞を介する血管新生効果が考えられる。術直後と術後24時間後の M2マクロファージ細胞数の変化を確認する。Voluntary exerciseによる術直後と術後24時間後のM2細胞数の変化を確認する。 Voluntary exerciseと非運動両群における、M2細胞数変化へのHMGB-1関与を検討する。以上によるHMGB1によるM2細胞の活性化が再生機序であることと肝再生へのM2マクロファージの作用機序を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究の結果に実施研究内容の変更の必要が出たため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進捗状況がやや遅れており、次年度で購入する。
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