【研究方法】LNCaP細胞株のWnt5BをsiRNAにてノックダウン、RNA抽出し各遺伝子の発現の変動を解析。PC3細胞にヒトリコンビナントWnt5Bを加え18時間培養、MTTアッセイおよびinvasion アッセイを施行。次に2014年8月1日から2015年8月30日の期間、当院外来受診患者で画像診断により骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と診断された59 症例および無作為に抽出した非転移性前立腺癌患者53例をコントロールとした。9ml血液を採取し血清を分離、凍結保存、検出には1サンプルあたり血清100ul使用し2回ずつ計測した。ヒトWnt5Bを抗原としたEnzyme-linked Immunosorbent Assay (ELISA) を行い血清中のWnt5Bの蛋白量を定量。EZRソフトにより統計解析。研究の実施にあたりすべての患者にインフォームドコンセントを得た。 【研究結果】Wnt5BノックダウンによりTNF、IGFγ、IL6、EGFの成長因子が低下した。Wnt5B投与にてPC3の増殖は亢進し、LNCaP、PC3の浸潤能は増大した。次にELISAの結果、骨転移症例の血清Wnt5B値は0.23±0.4、非転移症例では0.097±0.1と転移性CPRCで優位に高かった(P=0.29)。血清Wnt5B値は、単変量解析の結果、前立腺癌骨転移との優位な関連性が示された(OR9.82、95%CI 1.070-89.9、P=0.03)。またPSA値と血清Wnt5B値に相関はなかった。 【結論】Wnt5Bは前立腺癌において発現量が多いほど悪性度が高く、前立腺癌細胞において成長因子の分泌を促進し、細胞増殖、浸潤能を亢進する。さらに前立腺癌骨転移症例で血中への分泌量が増大し、PSAから独立した前立腺癌骨転移のバイオマーカーとしての臨床応用の可能性が示唆された。
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