研究課題/領域番号 |
26861261
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
重原 一慶 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (20595459)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / 咽頭感染 / 肛門感染 / 尿路性器感染症 / HPVワクチン |
研究実績の概要 |
今回の検討では、1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査2)MSM患者における肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査の3つを平行して行った。 1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査では、尿道炎にて受診した男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、液状細胞診の手法を用いてDNAを採取、HPV検出率について比較検討を行った。HPV検出率はうがい液18.3%、尿検体22.1%であった。うがい液、尿検体ともにHPV16型の検出率が最も高く、それぞれ37%、27%であった。尿道炎というハイリスク患者における咽頭のHPV感染率は尿路と同等であった。咽頭癌とHPV感染との関連性が示唆されてつつある昨今としては興味深い結果であったと思われる。 2)MSMにおける肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査では、MSM患者101例を対象に肛門スワブによう擦過検体と尿検体を採取した。HIV陽性率が98%と特殊な集団であったがHPV検出率は88%、尿検体41%と非常に高く、1)での検討と比較して、非MSM尿道炎男性に比べ尿路におけるHPV検出率は高かった。MSM男性における肛門癌とHPV感染との関連性が指摘されており、本結果は少なくともMSM男性に対してHPVワクチンを推奨すべき結果であることを示唆していると思われた。 3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査は、泌尿器科外来を受診した692例の男性患者を対象とし、陰茎におけるHPV検出率を検討したところ、HPV検出率は24.1%であり、その危険因子はクラミジア感染症、性行為パートナー数であった。日本人男性においても性行為を通じて無症候性HPV感染が生じていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査、MSMにおける肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査、日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査の3つのいずれにおいても順調に検体収集が施行できており、順調にHPV解析が進んでいる。日本人男性の咽頭、性器、尿路に無症候性HPV感染が約20%程度にしょうじており、また、MSM患者の肛門では約90%と高頻度にHPV感染が検出されていた。諸外国では男性におけるHPV感染に関する疫学調査が進んでおり、現在、約80か国において男性に対してもHPVワクチンの使用が認可されている。日本においては、副作用の問題でHPVワクチンの接種は中断されているものの、その問題が解決されれば、H男性に対する接種を考慮すべき1つのエビデンスになり得るものと考えている。一方、HPV感染と、その病原性(発癌の可能性)について言及するため細胞形態観察に関してはまだ行ておらず、今後、進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
①日本人男性を対象とした性器および尿路のHPV感染率に関する研究において、症例数をさらに集め(目標は1000例)、解析を行う。検体採取は東京、金沢市内のいくつかの病院にて現在も行われており、現在は800例超えの検体が集まっている。また、結果を国内および海外の学会にて発表し、論文化を目指す。 ②MSMを対象とした肛門、性器のHPV感染率に関する検討では、現在、100例超えの検体が集まっている。さらに検体を集めたうえで解析を進める。目標は150例と設定している。また、前述した通り、HIV陽性のMSM患者の肛門検体におけるHPV感染率は極めて高く、パパニコロウ染色を行って細胞形態を観察し、女性の子宮癌検診と同様にHPV感染細胞や異型細胞の有無について評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加した際の旅費を、余裕をもって多めに見積もった分のわずかな残りである。
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次年度使用額の使用計画 |
検体回収は順調に進んでいるので、成果発表を行うためのHPV学会の旅費に計上する。
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