研究課題
今回の検討では、1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査、2)MSM患者における肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査、3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査の3つを行った。1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査では、尿道炎にて受診した男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、HPV検出率を検討した。HPV検出率は、うがい液18.3%、尿検体22.1%であった。尿道炎というハイリスク集団において咽頭にも尿路と同等のHPV感染が生じていることが判明した。2)MSM患者における肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査では、80例を対象に肛門の擦過検体および尿検体を採取し、HPV検出率を比較するとともに、細胞診検体も作成し、パパニコロウ染色を行ってベセスダ分類に従い異形細胞について評価した。HPV陽性率は肛門検体88.7%、尿検体48.0%であった。一方、肛門細胞診はNILM 14例、ASC-US 40例、ASC-H 2例、LSIL 21例、HSIL 3例であった。近年、肛門癌とHPV感染との関連が強く指摘されており、特にMSMの肛門HPV感染による異型細胞の出現は、これらの関連性を支持する結果であった。3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査では、823例の一般健常男性を対象に亀頭擦過検体および尿検体を収集し、HPV検出率を検討した。HPV陽性率は、亀頭検体22.8%、尿検体5.8%であり、尿路に比較し亀頭検体のHPV感染率が高かった。年齢層別HPV感染率は、性器では20~50歳代で高く年齢が上がるごとに漸減傾向であった。一方、尿路では若年者に比べ40-50歳代に高く外性器の分布と異なる分布を示した。
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日性感染症学会誌
巻: 26 ページ: 73-79
日本性感染症学会誌