研究実績の概要 |
下部尿路閉塞(BOO)モデル動物や高血圧モデル動物で認められる各種下部尿路症状治療薬による膀胱血流の改善は薬剤の有する血管拡張作用に単に依存するのではなく、それらモデル動物においてみられる膀胱蓄尿期の不随意性膀胱収縮(non-voiding contraction, NVC)を各薬剤が抑制することが関与していることを証明すべく、α1遮断薬シロドシンをBOOラット(尿道狭窄ラット)と正常ラットに投与して膀胱血流の変化を検討した。 BOOラットではすべて膀胱内圧測定で蓄尿期にNVCを認めたが、正常ラットでは認めなかった。そして、ハロタン麻酔下・膀胱内圧10cmH2Oの条件下で膀胱内圧を持続的に測定したところ、すべてのBOOラットはNVCを示したが、正常ラットではNVCを認めなかった。 ハロタン麻酔下・膀胱内圧10cmH2Oの条件下で測定したシロドシン投与前の膀胱血流をBOOラットと正常ラットで比較すると、BOOラットの膀胱血流は正常ラットと比較して約40%に減少していた(p<0.001)。シロドシンを経静脈的に0.01 mg/kg、0.1 mg/kg投与すると、シロドシン0.01 mg/kgではBOOラット、正常ラットともに血流にほとんど変化を認めなかったが、0.1 mg/kgではBOOラットで約15%の血流の増加、正常ラットでは約5%の血流の増加を認め、BOOラットにおいてシロドシンの血流改善効果が高い傾向を認めたが、実験したラット数が十分でなかったためか有意差は認められなかった。 シロドシン0.1 mg/kgでBOOラットでNVCの抑制を認め、BOOラットで良好であったと考えられるシロドシンによる血流改善効果はNVCの抑制に一部因るものであることが示唆された。
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