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2014 年度 実施状況報告書

前立腺癌の上皮間葉転換と去勢抵抗性のクロストーク

研究課題

研究課題/領域番号 26861273
研究機関九州大学

研究代表者

塩田 真己  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20635445)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード前立腺癌 / 去勢抵抗性 / 上皮間葉転換
研究実績の概要

前立腺癌の進展において、上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition, EMT)および去勢抵抗性は、致死的な前立腺癌に至る致命的なステップである。進行性前立腺癌は、去勢抵抗性となりやすいことが知られており、EMTのマスターレギュレーターであるTwist1が、アンドロゲン受容体(androgen receptor, AR)の発現を制御することで、前立腺癌の進展に加え去勢抵抗性の獲得にも寄与していると考えられるが、EMTと去勢抵抗性の関連についての研究はほとんど見られない。そこで、本研究では、EMTと去勢抵抗性のクロストークに焦点をあてて、本研究を行った。
まず、EMT促進因子であるTGF-βの去勢抵抗性獲得への影響を検討した。TGF-β受容体発現前立腺癌細胞である22Rv1細胞にTGF-βを添加し、Twist1やARの発現を検討したところ、Twist1ならびにARの発現の亢進を認めた。また、長期間 TGF-β処理した22Rv1細胞は、浸潤能の亢進と共に、アンドロゲン除去下での細胞増殖の亢進を認め、去勢抵抗性の獲得が確認された。続いて、マトリゲル被覆boyden-chamberを用いて、マトリゲルを通過した細胞群を数サイクル選択することで、マトリゲルへの浸潤性の高い22Rv1細胞派生株(22Rv1/HI)を樹立した。22Rv1/HI細胞も、浸潤能の亢進と共に、Twist1やARの発現亢進と、アンドロゲン除去下での細胞増殖の亢進を認め、去勢抵抗性の獲得が確認された。以上より、EMT形質の獲得は、去勢抵抗性の獲得を促進するものと考えられた。
一方、LNCaPゼノグラフトモデルの去勢抵抗性組織においては、ARおよびTwist1、fibronectin、vimentinの発現亢進を認めるとともに、LNCaP細胞の去勢抵抗性細胞では、親株に比べ浸潤能の亢進を認めた。これらより、去勢抵抗性の獲得は、EMTを促進すると考えられ、去勢抵抗性とEMTの間には、Twist1/ARシグナルの干渉を通じた相互作用があることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに予定している研究の半分超を終えた。その結果、研究実績の概要で示した通りの事実が明らかとなった。その結果は、おおむね当初想定していた結果に沿ったものであった。また、研究の進展度としては、おおむね予定していた研究計画の通りに進んでおり、今後も引き続き、当初の予定通り本研究を推進予定である。

今後の研究の推進方策

これまで、前立腺癌細胞株を用いた検討を行ってきたが、細胞株のみならず臨床検体での意義を明らかにするため、ヒト前立腺癌組織でのTwist1やAR、EMT関連マーカーの発現と臨床病理学的因子との関連およびこれら分子発現の相互関係について検討を行い、ヒトでのTwist1/ARシグナルのEMTおよび去勢抵抗性獲得における重要性について検討する。
また、EMTシグナルを標的とした治療により、EMTシグナルを通じた癌の進展の防止とともに前立腺癌の去勢抵抗性の獲得を防止出来る可能性がある。本研究の結果、TGF-βがEMTを促進すると同時に、去勢抵抗性の獲得にも寄与することが分かった。そこで、TGF-β阻害剤を用いた前立腺癌治療の可能性について、in vitroおよびin vivoモデルを用いて検討を行う予定である。また、近年、アンチセンスオリゴやナノパーティクルなどを用いた遺伝子導入技術の臨床応用が盛んに研究されている。これらのテクノロジーを用いた新規治療法の開発についても検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 前立腺癌の進展と治療抵抗性機序の解明と臨床応用―前立腺癌の統合的理解を目指して―2015

    • 著者名/発表者名
      塩田真己
    • 学会等名
      第103回日本泌尿器科学会総会
    • 発表場所
      金沢
    • 年月日
      2015-04-18 – 2015-04-21
    • 招待講演

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公開日: 2016-06-01  

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