糖鎖抗体RM2を用いた免疫組織学的解析から、RM2糖鎖は前立腺癌特異的に発現し、癌の悪性度の指標の一つであるGleason scoreと相関することが報告されている。この結果は、RM2糖鎖を持つ糖蛋白が癌の新規診断マーカーとなり得ることを示す。 そこで、本研究では前立腺癌特異的な糖鎖抗体が強く認識する50kDaの糖蛋白の解明を目的とし、臨床病理学的所見や悪性度およびホルモン療法抵抗性との関連性等を明らかにすることを計画した。 昨年度までに、前立腺癌細胞株および正常由来細胞株に対するアミノ酸解析を行い、新規診断マーカーの候補蛋白を複数同定した。更に、これらの候補蛋白に対する抗体を用いた分子生物学的な解析から、腫瘍特異性の高い蛋白を選択し、腫瘍組織における免疫組織学的解析および血液・尿検体を用いた解析を進めて来た。免疫組織学的解析の結果、3つの糖蛋白は悪性度の高い前立腺癌においてより強く発現することが明らかになった。さらに、簡便な診断への応用を目的とし、本年度は血液中・尿中における当該糖蛋白レベルと悪性度およびホルモン療法抵抗性との関連性を解析した。糖蛋白の一つは良性疾患において尿中蛋白レベルの増加が明らかとなり、現在癌と良性疾患との鑑別に向けた解析を進めている。一方、当該糖蛋白の血清中レベルと悪性度等との関連性は現在のところ明らかに出来ていない。これは、本解析がRM2搭載糖蛋白ではなく当該蛋白レベルを測定しており、腫瘍特異性を反映していないためと考えられた。現在、RM2搭載糖蛋白レベルの定量を試みており、今後、血清診断マーカーとしての有用性評価へと展開する。
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