研究課題/領域番号 |
26861280
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古林 直人 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (20420680)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / miRNA / 再燃癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、再燃性前立腺癌におけるmiRNA の機能に着目し、再燃癌モデル細胞株 (LNCaP-AI) を用いたmiRNA の網羅的発現解析を行い、前立腺癌がアンドロゲン非依存性増殖へと進行する過程におけるmiRNA の新規分子機構を、アンドロゲン除去環境下におけるin vitro およびin vivo の実験系を用いて詳細に検討し、再燃癌におけるkey molecule となるmiRNA を同定するとともに、miRNA を中心とした新たな再燃癌発症メカニズムを解明し、有効な補助療法確立にむけた病態解明を目指す。
1)当研究室で樹立した再燃癌モデル細胞株 (LNCaP-AI) を用いたmiRNA の網羅的な発現解析を行なったところ、親株であるLNCaPに比較して発現が増加または低下している複数のmiRNAを見出した。また、これらのmiRNAの発現量をqPCRで解析し、有意に発現異常が認められるmiRNAを同定した。 2)同定されたmiRNAの発現ベクターをLNCaP に遺伝子導入し、アンドロゲン除去培養液中で培養し、増殖能を測定したところ、あるmiRNAを遺伝子導入するとアンドロゲン除去培養液中で細胞増殖能が亢進することを見出した。 3)このmiRNAの臨床検体における発現量を定量するために、再燃癌の骨転移組織(n=8)における発現量をqPCRにて測定したところ、他の前立腺癌組織(n=56)よりも有意に発現が増加していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の研究室で作成した再燃癌モデル細胞株(LNCaP-AI)を用いたmiRNA の網羅的な発現解析によって、再燃癌において発現異常が認められる複数のmiRNAを見出した。さらにこれらのmiRNAの中から、in vitroにおける実験において、アンドロゲン非依存性増殖に関わるmiRNAを同定した。また、再燃癌臨床検体における発現解析から、このmiRNAが再燃癌において発現増加していることを見出しており、研究はおおむね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
我々はin vitroにおける実験において、アンドロゲン非依存性増殖に関与するmiRNAを同定した。今後は、プロテオーム解析や各種生化学的解析を行うとともに、マウスを用いたin vivoにおける実験を行い、miRNAを介したアンドロゲン非依存性前立腺癌に至る機能を詳細に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度行ったmiRNAの網羅的な発現解析において、当初予想していたよりも、得られた発現異常を示す候補miRNAの数が少なく、網羅的発現解析によって相当数の候補分子を絞り込むことができた。また、各種データベース上で公開されている発現情報からフィルタリングを行うことによってより精度を高める工夫を行った。そのため、その後のqPCRや遺伝子導入などの実験も必要最低限の数で済ますことができ、当初それら実験で購入する予定であったvectorやqPCRの試薬等の購入費を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、発現解析をメインとした様々な実験を行ってきたが、来年度はプロテオーム解析や各種生化学的解析、in vivoにおける機能解析を行う予定であり、研究を遂行する上で必要不可欠な各種実験試薬等を必要としている。具体的には、核酸、タンパク関係実験用試薬(遺伝子発現解析試薬、タンパク発現解析試薬、Luciferase assay用試薬)、組織培養用試薬(培地、血清等)、免疫組織化学用試薬(一次抗体、検出用試薬、蛍光標識抗体等)、実験動物(SCIDマウス等)などの購入を行う予定である。また、研究成果発表としての学会参加費、論文校正費を含めた論文掲載費等の使用を予定している。
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