研究実績の概要 |
現在、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対する有効な治療法は限られており、これらの治療法も長くは奏功しないことから、CRPC発生機序に基づく新たな治療法の確立が待たれる。我々は、これまでmiRNAに着目し、新たな分子標的治療法およびバイオマーカーの確立を目指して、前立腺癌におけるmiRNAの探索とそれらmiRNAにおける癌の進展機序の解明を行ってきた。本研究では、アンドロゲン除去環境下におけるmiRNAの発現および機能を網羅的に解析し、CRPCにおけるKey moleculeとなるmiRNAを同定するとともに、miRNAを中心とした新たなCRPC発症メカニズムを解明し、有効な治療法確立にむけた病態解明を行ってきた。 1)当研究室にて樹立したCRPCもでる細胞株(LNCaP-AI)を用いたmiRNAの網羅的発現解析により、親株であるLNCaPに比較して発現が増加または低下している複数のmiRNAを見出した。また、これらのmiRNAの発現量をqPCRで解析し、LNCaP-AIにおいて有意に発現異常が認められるmiRNAを同定した。 2)同定されたmiRNAの発現ベクターをLNCaPに遺伝子導入し、アンドロゲン除去培養液中で培養し、増殖能を測定したところ、ある特定のmiRNAの発現ベクターを導入した細胞において細胞増殖能が亢進することを見出した。 3)このmiRNAの臨床検体における発現量を定量するためにCRPCの骨転移組織(n=8)における発現量をqPCRにおいて測定したところ、根治的に切除された前立腺癌組織組織(n=56)に比較して有意に発現が増加していた。 4)同定されたmiRNAの発現ベクターをLNCaPに遺伝子導入したところAR,PSAタンパクの発現が増加し、標的遺伝子の1つとしてARのco-repressorであるNCOR2を同定した。 5)同定されたmiRNAの発現ベクターをLNCaPに遺伝子導入したところ、Akt、S6、mTORタンパクのリン酸化が亢進し、PI3K / Akt Signalingを介した癌の増殖活性増加が示唆された。
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