研究実績の概要 |
浸潤性膀胱がんの標準的治療は尿路変更術を必要とし、患者のQOLを著しく低下させている。そのため新たな膀胱温存治療の開発は急務となっている。私たちはこれまでに、新たながん治療法の開発を目的に、磁性ナノ粒子(Magnetic cationic Liposome:MCL)を用いたがん病巣のみを特異的に加温できる新しい治療法を開発し(MCL Thermotherapy)、前立腺がんをはじめ様々ながんに対する治療効果と強い腫瘍免疫の誘導を報告してきた。一方、がん免疫治療もその分子機構が明らかにされ、膀胱がんにおける免疫治療の感受性の高さが明らかにされている。今回これまでの研究成果を踏まえて、MCL膀胱内注入療法とがん免疫治療の併用による、浸潤性膀胱がんに対する新たな膀胱温存治療法を開発することを目的とする。 私たちはまず『ヒト膀胱がん細胞株におけるMCLの吸着の検討』を行った。当研究室にて保管しているヒト膀胱がん由来の4つの細胞株 (RT4, RT112, 5637, T24)におけるMCLの吸着および取り込みを走査型電子顕微鏡にて確認した。MCLは正電化しているため、負電化している細胞との吸着は良好であった。次いで、『高温度暴露によるヒト膀胱がん細胞株における免疫誘導サイトカインの検討』を行った。免疫誘導サイトカインであるIFN-γおよびIL-2の発現量の増加を確認した。そして浸潤性膀胱がん動物モデルの作成し、『膀胱がん皮下腫瘍に対するMCL Thermotherapyの治療効果の検討』を行った。MCL Thermotherapyにより、膀胱がん皮下腫瘍は確実に縮小した。
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