研究課題/領域番号 |
26861285
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
柴田 泰宏 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10534745)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前立腺肥大症 / GDNF / 前立腺肥大症モデルラット / GZF1 |
研究実績の概要 |
前立腺肥大症は高齢化とともに患者数が増加し、社会的に重要な疾患である。現在、前立腺肥大症に対する内服治療は、α1ブロッカーと広義の抗アンドロゲン薬が用いられている。しかし、アンドロゲンの作用を低下させても、前立腺の上皮細胞数は減少するものの、間質細胞数は影響を受けない。前立腺肥大症の病理組織は間質成分が70%を占めるため、間質成分を標的とした新しい治療薬の開発が求められている。 近年、私たちは胎児ラットの前立腺原器である泌尿生殖洞(urogenital sinus; UGS)を成体雄ラットの前立腺皮膜下に移植することで、病理学的にヒトと類似した間質増生主体の前立腺肥大症モデルを作成した。このモデルは形態がヒト前立腺肥大症と似ているだけでなく、アンドロゲン受容体を発現していること、bFGFとTGFβ1の発現が亢進していることなど、ヒトの前立腺肥大症に近い性質を持つ。 私たちはこれまでに、ヒト前立腺肥大症にGDNFが発現し、前立腺サイズとGDNF受容体遺伝子の発現に関連があることと、正常前立腺由来の培養細胞にGDNFおよびその受容体が発現していることを確認している。本研究においては、間質優位前立腺肥大症モデルにおけるGDNFの役割の詳細を明らかにするため、GDNFの受容体の下流経路の詳細を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
私たちはこれまでに、ヒト前立腺肥大症にGDNFが発現し、前立腺サイズとGDNF受容体遺伝子の発現に関連があること、および、正常前立腺由来の培養細胞にGDNFおよびその受容体が発現していることを確認している。今後、間質優位前立腺肥大症モデルにおけるGDNFの役割の詳細を明らかにするため、GDNFの受容体の下流経路の詳細を検討中である。 GDNF誘導遺伝子として知られるGZF1(GDNF inducible zinc finger protein 1)やSEP1などの経路の活性化を定量PCR法で検討中である。また、GDNFは受容体と結合後にRET癌原遺伝子に結合することから、その下流のリン酸化経路(RAS、RAF、MEK、AKT、mTOR等)をwestern blotting法にて検討する。また、ヒト前立腺肥大組織における同経路の活性化を同様に確認する。 上記の通り、ヒト正常前立腺由来細胞を用いた検討を行ってるが、株によりGDNFを投与した場合の反応に大きな差が見られ、このため達成度がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、前立腺肥大症の発生誘引物質としてのGDNFの可能性について検討を行っている。現在、GDNF下流であり、GDNF誘導遺伝子として知られるGZF1(GDNF inducible zinc finger protein 1)やSEP1などの経路の活性化を定量PCR法で検討中である。しかし、現在、ヒト前立腺由来細胞株の株間の薬剤感受性にかなりの差異が見られることが判明した。使用しているヒト前立腺由来細胞株は、がん細胞から樹立された株では無く、正常前立腺から得られた株であるため、分裂能、分裂回数は有限である。このため、永続して使用できず、各ロットにおいて性質にばらつきがあることはある程度予測できたが、GDNF投与の細胞増殖能への寄与が株間において予想を超えて大きな差をもつことが判明した。前年度中に高感受性株が継代限界を超え使用不可能となったため、同細胞株を用いて検討すべき項目が次年度へ持ち越される形となった。今後の研究の推進方策としては、まずGDNF高感受性のヒト前立腺由来細胞株の選別を行うことを第一に行い、その後GDNFーRET系の下流のシグナル伝達経路についての検討を行う。
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