研究実績の概要 |
本研究はmTOR阻害薬の新たな標的分子を発見することで、抗腫瘍効果の作用機序の解明や抵抗性の克服、あるいは標的分子に基づいた合理的で強力な新規抗がん剤の開発を目標に行っている。 具体的には2種類(A, B)のmTOR阻害薬、3種類の薬剤感受性の異なる腎癌細胞株(a, b, c)を用いて研究を施行している。まず、mTOR阻害薬A, Bのa, b, cに対する抗腫瘍効果を精査した。これによりmTOR阻害薬の種類による感受性の違い、細胞株による感受性の違いが確認された。次に、カルボキシル基を持った、ナノ磁性ビーズにmTOR阻害薬を結合させ、mTOR阻害薬結合ビーズを作製した。この薬剤結合ビーズと、感受性の違いが顕著であった、細胞株2種類を用いて、mTOR阻害薬結合タンパクを精製した。これらの薬剤結合タンパクを比較し、薬剤、細胞間で共通に結合するタンパクや一方でしか結合していないタンパクを確認した。 これらの結合タンパクを、MALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型)質量分析法を用いて、それぞれのmTOR阻害薬結合タンパクを同定した。8個解析したが、同定できたのは現在のところ4種類である。この4種類のうちがんの増殖に関係していると思われるタンパクを認めており、今後タンパクの抗体を用い結合の確認、RNAiを用いて腎細胞癌株への関与、mTOR阻害薬の抗腫瘍効果における関連について精査していく予定である。
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