研究実績の概要 |
膀胱癌微小環境中の腫瘍関連性マクロファージ (Tumor associated macrophage, TAM) および 腫瘍関連性繊維芽細胞 (Cancer associated fibroblast, CAF) と癌細胞間におけるケモカイン CXCL1 の役割を明らかにすべく検討を行ってきた。ヒト膀胱癌パラフィン包埋切片を対象として CXCL1, CD204 (TAM marker), aSMA (CAF marker), MMP2, E-cadherin 抗体を用いた免疫染色を実施,評価した。CXCL1 高発現症例において,病期進展率が高く,MMP2 高発現,E-Cadherin 消失と関連しており,さらに腫瘍組織内 TAM および 腫瘍周囲間質組織中に CAF が多く存在していることが分かった。二重蛍光免疫組織染色により,腫瘍組織近傍の TAM, CAF はいずれも CXCL1 を発現していた。これらのことより,CXCL1 は,膀胱癌と周囲の TAM, CAF 間の介在シグナルとして機能していることが示唆された。そしてそのシグナルにより,癌細胞の上皮間葉移行を促進し,間質への浸潤,多臓器への転移へと進展していくと考えられる。 膀胱癌培養細胞内の CXCL1 の発現を定量したところ,T24 細胞において高発現していた。T24 細胞内の CXCL1 をノックダウンすることで,どの細胞内シグナル伝達経路が抑制されるか,また最終産物としてどのような癌関連蛋白が影響をうけるかをシグナルアレイおよびタンパクアレイで検討した。その結果,癌細胞内の CXCL1 は MAPK/ERK カスケードを介して,Interleikin-6 (IL6) の発現亢進と Metalloproteinase inhibitor 4 (TIMP4)の発現抑制と関連していることが分かった。
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