尿路上皮癌におけるAxl-Gas6経路の関連についての研究を前年に引き続き継続して行った。 尿路上皮癌細胞の1つであり、商業的に入手可能な細胞株であるUMUC3細胞株を用いて研究を行った。またAxlのリン酸化の阻害薬としては、これも商業的に入手可能な化学物質であるR428を購入して使用した。 UMUC3細胞株に関してのAxlの発現を細胞免疫染色、並びにWestern blottingを用いて確認した。そのリン酸化物質であるp-Axlに関しても同様に評価を試みたが、p-Axlが非常に不安定な物質であり、試行回数を重ね、また手法を変えても安定した結果を出す事が困難であった。この為現時点ではそのリン酸化阻害薬の投与による分子生物学的経路の評価が難しく、手法を変えて評価を行っている最中である。 続いてAxlリン酸化と浸潤に関しての細胞実験における評価として、xCELLigence Systemを用いて、また試薬としてはAxlリン酸化阻害薬であるR428を用いて細胞毒性、並びに細胞浸潤に与える影響についての評価を行った。結果としてR428にはUMUC3細胞株に対しての直接の細胞毒性は無いものの、浸潤能に関しては著明に抑制されることが示唆された。 当病院所持のmbt2v細胞株に関してAxlの発現の有無を確認した所、発現は認められなかった。この為当初予定されていた尾静注による肺転移モデルを用いた、in-vivoでのAxl阻害薬を用いた転移抑制の有無に関する評価は困難であり、断念した。現在は他のin vivoモデルの作成を検討中である。
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