研究実績の概要 |
平成28年6月に公開されたエコチル調査全出生固定データ(全103,099人の妊婦)の内、宮城ユニットセンターは9,177人の妊婦が含まれていた。追加調査の参加状況より分娩後3年の調査が延期されたことから、本研究では分娩後1.5年の調査データのみで解析を行った。その中で分娩後1.5年の質問票に回答があった妊婦2,310人を研究対象とした。分娩後1.5年の質問票の中で、月経痛および月経前の精神状態に関する質問に回答があった対象は、それぞれ2,016人、2,046人であった。 分娩後に再開した月経において、疼痛の程度は中等度~高度が28.2%に及び、若年、やせ、肥満、精神疾患既往、妊娠中精神状態、産後うつ、再開後月経不順が関連していた。 月経前の精神状態はPremenstrual Symptoms Questionnaireから、中等度から高度の月経前症候群(PMS)は3.1%、月経前不快気分障害(PMDD)は1.0%であり、若年女性の非妊娠時と比較し低いもので、分娩後には月経周期に起因する精神不安定さは少ない可能性が示された。また精神疾患既往、妊娠中の喫煙、妊娠中K6 score、産後うつが関連していた。 これらの月経関連疾患において、妊娠分娩歴、流早産、Hypertensive disorders of pregnancy、妊娠糖尿病などの周産期合併症や分娩様式、分娩時出血、母児入院期間など分娩経過との相関も認められなかった。さらに月経関連疾患には相互的な関連は見られ月経痛が強いほど月経前の精神状態が不安定であった。 本研究の結果より、分娩後1.5年までに再開した月経において、疼痛の程度は妊娠前の属性と関連し、月経前の精神的不安定さは妊娠中の喫煙や精神状態と関連していたが、ともに周産期の合併症や異常経過との関連性が低かった。
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