研究実績の概要 |
近年の我が国の晩婚化、晩産化の傾向に伴い、卵子の加齢による妊孕性の低下は、現在の生殖医学において最も大きな問題の一つとなっている。そこで、卵子の加齢性変化として重要と考えられる紡錘体機能およびミトコンドリア機能について、以下の検討を行った。 (1)卵子における紡錘体の蛍光イメージングと画像解析 染色体分配を担う紡錘体の蛍光イメージングについて、ヒト卵子を用いた試験に先立ち、動物卵子を用いた検討を行った。実験動物としてはマウスが代表的ではあるが、げっ歯類の卵子における紡錘体の形状は、他の動物種とは異なるいくつかの特徴を有する。そこで、マウスばかりでなく、紡錘体形状がよりヒトに近い家畜の卵子も用いて検討を行った。また、画像解析ソフト(ImageJ)用い、得られた蛍光写真の画像解析についても試みた。 マウス卵子の紡錘体はその極軸を細胞膜と平行に位置するのに対し、家畜卵子のそれは垂直に配置される。卵子の直径は、マウスが73.8±0.4 μmであるのに対し、家畜は116.8±1.4 μmと有意に大きかった(P<0.01)。一方、マウス卵子では家畜卵子に比べ2倍以上も大きい紡錘体を形成していた(22.3±0.4 μm vs. 9.8±0.3 μm,P<0.01)。そこで、紡錘体を構成する微小管の蛍光輝度を計測したところ、マウス卵子の紡錘体の値が有意に高く(38,384±2,117 vs. 6,788±786,P<0.01)、微小管が豊富に存在するものと考えられた。中心体関連タンパク質であるγチューブリンについても同様に蛍光観察、画像解析を行ったところ、マウス卵子の紡錘体の値が有意に高く(5,353±498 vs. 1,811±253,P<0.01)、このことが微小管の再編成を促進し、マウス卵子において巨大な紡錘体を形成する一因である可能性が示唆された。 (2)ミトコンドリア機能の解析
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