胞状奇胎は細胞遺伝学的に規定された疾患である。続発症リスクの高い全胞状奇胎は、雄核発生2倍体であり、部分胞状奇胎は父2母1のハプロイドで構成される3倍体である。新鮮組織から抽出したゲノムDNAを用いてSTR多型解析を行うことが、最も診断精度が高いと考えられているが、施行できる施設は極めて限られている。胞状奇胎を正確に診断することは、胞状奇胎後の管理を行う上で、きわめて重要である。 日常診療で用いられる、パラフィンブロック検体を用いて、STR多型解析による細胞遺伝学的診断に匹敵する、分子病型診断法の確立を企画した。セントロメア近傍のプローブを用いたChromogenic in situ Hybridization(CISH法)による倍数性診断CISH法と、これまでに確立されたp57KIP2免疫染色法(雄核発生奇胎が抽出可能である)を合わせて、絨毛の分子病型診断法の確立を目的とした。 当科で既に、DNA診断を行った80例のパラフィンブロック検体を用いた。免疫染色(p57KIP2)は、これまでの報告通り、雄核発生奇胎では、全例細胞性栄養膜細胞は染色陰性であった。部分奇胎および流産(両親由来2倍体)症例では、全例細胞性栄養膜細胞陽性であり、DNA診断の結果と矛盾しなかった。17番染色体のセントロメア近傍プローブによるCISH法を行った。40例中28例では、理論通りのシグナルが確認できた。10例では、シグナルを得ることができなかった。CISHシグナルを安定して獲得するには、検体の処理法が重要である可能性がある。
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