研究課題/領域番号 |
26861316
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
島 友子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (00377285)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 母児免疫寛容 / 精漿 / 制御性T細胞 / 制御性樹状細胞 |
研究実績の概要 |
免疫寛容が妊娠維持に必須であることは知られており、申請者はこれまでに制御性T細胞(Treg)が母児免疫寛容に重要な役割を果たすことを報告してきた。その誘導機序として父親由来の精漿が妊娠時の免疫寛容誘導を担っている可能性が示唆されている(Robertson S らBOR2009)。申請者はT細胞受容体から父親抗原特異的制御性T細胞をT細胞受容体レベルで正確に同定する手法を開発し、これまでに精漿プライミングにより着床1日前に父親抗原特異的Treg細胞が子宮所属リンパ節に集簇し、着床後に子宮に同細胞が集簇することを証明し、同細胞が着床前後で妊娠維持に非常に重要な役割を果たしていることを報告した(Shima Tら,JRI2015)。今回、精漿がどのような機序で免疫寛容を誘導するのかを、父親抗原特異的Treg、制御性樹状細胞、制御性NK細胞等の免疫細胞との関連性から明らかにすることを目的とし、研究を進めた。 マウス妊娠における精漿存在の有無による各臓器における樹状細胞のpopulationおよびその変動をフローサイトメトリーを用いて解析した。精漿の免疫細胞への機能を検討するため、精嚢除去マウスを作成し、アロ交配させた。アロ交配では同系交配および非妊娠マウスに比較し、着床直前(day3.5)および着床直後(day5.5)で子宮局所においてMHCclassⅡ発現低下、CD86分子発現低下、B7DC分子発現増強を認めた。一方で、精嚢除去マウスとのアロ交配では、上記分子発現は同系交配や非妊娠マウスと変化を認めなかった。精漿のプライミングが子宮における制御性樹状細胞の誘導に関連していると考えられた。現在この制御性樹状細胞の機能解析を施行しているところである。また、父親抗原特異的Treg細胞のさらなるPopulation解析および制御性NK細胞の変動についても検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請においては、平成26年度にはマウス精漿存在の有無における父親抗原特異的Treg細胞、制御性樹状細胞、および制御性NK細胞の変動および機能解析が本年度の研究予定としていた。 どの細胞分画も微小であり、妊娠成立しサンプル採取をしても同時に上記細胞すべての解析が困難である。また、精嚢腺除去マウス(精漿のないマウス)と正常メスマウスとの交配も、通常の交配(正常オスマウス、正常メスマウス)に比較し効率が悪い状態である。 このため、サンプル数確保に時間を要しているが、徐々にサンプル数を増やしその変動について確認しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に予定していた研究はやや遅れているものの、現時点では解析の見通しがたっている状態であり、継続していく。研究進展を改善するために、適宜マウス妊娠効率を確認しながら研究を進めていく必要がある。 本年度予定の研究が終了次第、平成27年度予定の研究にすすめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況にあわせて費用を使用した。次年度も研究継続予定であったため、当初より次年度使用額が生じるように使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として、実験動物であるマウス購入費および飼料などを含めた飼育量、DNAマイクロアレイきっとの購入、フローサイトメトリーのための抗体購入費に使用する計画である。 また、人件費および研究発表のための旅費や論文投稿料に使用する予定である。
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