研究課題/領域番号 |
26861317
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
保野 由紀子 金沢大学, 大学病院, 助教 (80565416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / 卵巣チョコレート嚢胞の癌化 |
研究実績の概要 |
子宮内膜症より発生する卵巣がんの遺伝子異常の解析結果に基づき、卵巣チョコレート嚢胞から不死化した上皮細胞株にdominant negative p53 (DN-p53)、活性化型KRAS遺伝子を導入した。さらにc-myc、bcl2、PIK3CA、phospho-Ak、shRNA-PTENの強制発現ベクターを導入し、軟寒天培地上でのコロニーの形成、ヌードマウスの造腫瘍能を確認した。 不死化細胞株にDN-p53と活性化型KRASを導入してもコロニー形成、ヌードマウスの造腫瘍能とも認めなかった。さらにc-myc、bcl2、PIK3CA、phospho-Aktを強制発現したところ、いずれにもコロニーの形成とマウス造腫瘍能を認めた。c-mycの導入がコロニー形成、マウス造腫瘍能とも最も高率であった。shRNA-PTENを導入してもコロニー形成、ヌードマウスの造腫瘍能とも認めなかった。また、不死化細胞株にDN-p53とc-mycを導入してもコロニー形成、ヌードマウスの造腫瘍能とも認めなかった。また、できた腫瘍は脱分化した形態を認めた。 子宮内膜症性卵巣嚢胞から発生する癌化にはp53の不活化、KRAS遺伝子活性化の2 hitに加え、c-mycの活性化が必要であることが示唆された。bcl2、PIK3CA、phospho-Aktの関与については、これらの下流でいずれもmycが活性化されており、myc経路に集約される可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的は、卵巣チョコレート嚢胞の癌化に関連する様々な遺伝子を加えることで、癌化モデルの作成を試み、また、得られた細胞株の性状を解析し、治療に有用な分子標的を同定することまでを目標としている。今年度は、子宮内膜症より発生する卵巣がんの遺伝子異常の解析結果に基づいた遺伝子、dominant negative p53 (DN-p53)、活性化型KRAS、さらにc-myc、bcl2、PIK3CA、phospho-Aktを導入することで、ヌードマウスに腫瘍を作成することまでできた。
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今後の研究の推進方策 |
上記手法で得られたマウス腫瘍の形態を詳細に解析したところ、必ずしも純粋な上皮形態を示すわけではなく、肉腫様形態を示す所見も得られている。この原因を明らかにするのが今後の研究の方向性として重要であると考える。作成した細胞株は上皮細胞であることは、上皮マーカーの発現で確認しており、間質系細胞の混入による形態変化は考えにくい。一方、活性化型KRASやc-mycを導入することで細胞が脱分化することも報告されており、このような遺伝子導入の結果としての脱分化の可能性も考えられる。さらには、培養過程で細胞株が上皮間葉転換(EMT)を起こした可能性も排除できない。このため、EMT関連遺伝子の変化を詳細に解析しているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が計画以上に円滑に進んだためと、資料集めのための学会に出席できなかったことがあったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の実験計画を実施するにあたり必要となる物品や、資料集めのための学会参加に使う予定。
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