研究課題
我々はHPV16陽性細胞株を用いて、APOBECがインターフェロンβによって誘導され、HPV16 E2遺伝子にC-to-T/G-to-A hypermutationを導入する事を以前報告した。そのような現象がin vivoでも起きているのか検討するため、HPV16陽性子宮頸部異形成検体を用いてHPVゲノムの変異解析を行った。その結果、細胞株で得られた知見と同様、HPV16 E2遺伝子にもhypermutationが検出される事を発見し報告した。すなわちAPOBECによるE2のhypermutationIがin vivoでも起きている事が示唆された。さらに、これまでの変異解析は3D-PCRというPCRの変法を用いて行ってきたが、新たに次世代シーケンスを用いた変異解析方法を立ち上げた。この方法でHPV16陽性異形成検体を解析した結果、E2以外の広い遺伝子領域にhypermutationが入っている事を示した(投稿準備中)。一方で、HPVウイルス粒子の形成におけるAPOBECの役割についても検討を始めた。Pseudovirion(PsV)を用いた実験系で、PsV産生細胞でAPOBECを強制発現させる事でPsVの感染性が低下する事を発見した。さらにHPV16キャプシド蛋白であるL1にAPOBECはin vitoで結合する事をあわせて報告した。以上の知見はAPOBECがカプシド蛋白への結合を介してPsVの感染性を低下させている可能性を示唆した。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体を用いたウイルスゲノムの変異解析の結果、hypermutationが広範囲に見つかった事は順調な成果といえる。ゲノム不安定性やウイルスゲノムのインテグレーションを評価するin vitroの系は立ち上げに時間がかかっているが引き続き取り組んでゆく。立ち上がり次第マウスへの移植の実験系も立ち上げたい。
引き続きAPOBECによるゲノム不安定性惹起やHPV16ゲノムのインテグレーションを評価するin vitroの系を立ち上げる。初代表皮細胞へのHPV16ゲノムの遺伝子導入以外に、不死化表皮細胞へのHPV16ゲノムの導入、さらにエピソーム型HPV16を持つ細胞株W12を代わりに使う事も視野にいれ進めて行く。臨床検体についてもAPOBECの発現と変異蓄積やインテグレーションの相関について引き続きデータを蓄積する。
41533円の未使用額が生じたが、翌年度に使用する事が効率的と考えた為H27年に持ち越しをした。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 457 ページ: 295-299
10.1016/j.bbrc.2014.12.103
Journal of Medical Virology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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