研究課題
AID/APOBEC ファミリーは、脱アミノ反応によりシトシン(C)をウラシル(U)に変換する遺伝子改変酵素群である。本研究は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染病態における APOBEC の発癌への関与を明らかにする事を目標にした。①子宮頸部異形成細胞株W12を用いた検討にて、インターフェロンβによりAPOBECが誘導されHPV16ゲノムに連続するC-to-U変異(hypermutation)が導入される事を明らかにした。②同じくW12を用いて、上皮細胞の分化がAPOBECの発現を誘導し、ミトコンドリアゲノムにhypermutationを導入する事を明らかにした。③293細胞を用いた検討により、APOBECは染色体ゲノムにもhypermutationを導入する事を明らかにした。④HPV16(+)子宮頸部異形成検体を用いた検討の結果、W12と同様hypermutationがHPV16ゲノムから検出される事を明らかにした。⑤中咽頭癌検体を用いた検討により、APOBECの発現量とHPV16ゲノムの宿主へのインテグレーションは相関する事を明らかにした。以上の知見から、APOBECはウイルス感染により放出されるサイトカインや宿主細胞の分化によって誘導され、染色体、ミトコンドリア、HPVゲノムに変異を導入する事で発癌に寄与する可能性が示唆された。また変異導入がHPVゲノムのインテグレーションに寄与している可能性が示唆された。現在APOBECにより導入された変異が細胞の形質にどう影響を与えるのかなど、さらに検討を進めている。
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Oncogene
巻: 36 ページ: 1687-1697
10.1038/onc.2016.335.