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2015 年度 実施状況報告書

子宮平滑筋肉腫の血行性肺転移に対する新規抗転移薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26861319
研究機関産業医科大学

研究代表者

石兼 真  産業医科大学, 医学部, 助教 (40470190)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード子宮肉腫 / 血行性肺転移 / 生理活性ペプチド / 血管内皮細胞 / 抗転移薬
研究実績の概要

癌の進行に対して生活習慣病が大きく関与していると考えられており、循環器疾患である高血圧と癌の関連性についても基礎、臨床研究において重要性を示唆する報告がある。高血圧の原因の一つに、レニン・アンジオテンシン系の亢進があげられる。その中でも、昇圧ペプチドであるアンジオテンシンII(Ang II)が癌の進行に関与していることが報告されているが、癌転移促進メカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、Ang IIシグナルの癌肺転移増悪メカニズム解明から抗癌転移薬を開発し、悪性腫瘍の血行性他臓器転移に対する新規治療法の確立を目的とし、本年度は血行性癌転移モデルマウスを用いて、生理活性ペプチドの転移抑制効果の評価、転移抑制メカニズムの解析を行った。また、子宮肉腫の血行性肺転移に対する抗転移薬の有効性を評価するために子宮肉腫転移モデルの確立を行った。
(1)血行性メラノーマ肺転移モデルを用いた検討により、AngIIを持続投与したマウスでは、コントロールマウスと比較して癌肺転移が増悪することを確認した。また、心房性ナトリウム利尿ペプチド投与により、AngII誘導性メラノーマ肺転移が有意に抑制されることを明らかにした。
(2)AngIIを持続投与したマウスの肺血管内皮細胞において、細胞接着因子の発現が増加し、心房性ナトリウム利尿ペプチド投与によりその発現増加が抑制されることを明らかにした。また、AngIIを持続投与したマウスでは、尾静脈投与した癌細胞の肺への接着が増加し、心房性ナトリウム利尿ペプチド投与により抑制されることを明らかにした。
(3)GFP導入ヒト子宮肉腫株を作製し、免疫不全マウスの子宮に移植することで子宮肉腫自然転移モデルを確立した。モデルは90%以上の確立で自然肺転移を形成し、再現性あるモデル作製に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当年度は、血行性癌転移モデルマウスを用いて、Ang II誘導性転移増悪化に対する心房性ナトリウム利尿ペプチドの抑制効果の検討、子宮肉腫転移モデルの確立を計画していた。血行性癌肺転移モデルを用いた検討において、Ang IIによる癌肺転移増悪効果に対する心房性ナトリウム利尿ペプチドの抑制作用、血管内皮細胞での接着因子発現変化に対する調節機構を明らかにした。また、自然肺転移形成能を有する子宮肉腫転移モデルマウスを確立した。これらの研究結果をもとに、癌転移増悪メカニズムの解明を進めており、進展状況は順調であると考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究結果をもとに、Ang IIによる癌転移増悪メカニズム解析を進めると共に、抗高血圧薬や生理活性ペプチドの転移抑制薬としての有効性や転移抑制メカニズムを明らかにする。また、子宮肉腫転移モデルを用いて、子宮肉腫の血行性肺転移に対する転移抑制薬の有効性評価を行う。
(1)Ang II増悪血行性癌肺転移モデルを用いて、生理活性ペプチドによる転移抑制効果を評価する。in vivo、in vitroの評価により癌-血管内皮接着過程、組織移行過程における生理活性ペプチドの作用を明らかにする。PCRやウェスタンブロットを用いて、転移調整因子やシグナルの同定や免疫細胞を介した転移調節機構の解明を行う。
(2)子宮肉腫転移モデルマウスを用いて、抗転移薬や生理活性ペプチドの子宮肉腫他臓器転移に対する抑制効果を評価する。

次年度使用額が生じた理由

当年度は、当初計画よりもin vivo実験での薬物濃度設定が順調に進み、使用薬物量を少なくすることができた。また、年度途中での所属機関の移行があり、動物実験の中断期間があったため、予定より動物や研究試薬類の購入が少なかったことから、次年度使用額が発生した。

次年度使用額の使用計画

次年度は、実験動物を用いた評価検討を行うため、研究経費の多くは癌転移モデル作製のための実験動物(マウス)の購入に充てる予定であり、次年度使用額を合わせて使用予定である。また、核酸・タンパク実験のため、PCR試薬やウェスタンブロット試薬、抗体購入に研究費の使用を予定しているが、マイクロアレイを用いた網羅的解析を行うために、次年度使用額を使用する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Establishment and characterization of a novel orthotopic mouse model for human uterine sarcoma with different metastatic potentials.2015

    • 著者名/発表者名
      Kawabe, S., Mizutani, T., Ishikane, S., Martines, ME., Kiyono, Y., Miura, K., Hosoda, H., Imamichi, Y., Kangawa, K., Miyamoto, K., Yoshida Y.
    • 雑誌名

      Cancer Letters

      巻: 366 ページ: 182-190

    • DOI

      10.1016/j.canlet.2015.06.018.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transcriptional regulation of genes related to progesterone production.2015

    • 著者名/発表者名
      Mizutani, T., Ishikane, S., Kawabe, S., Umezawa, A., Miyamoto, K.
    • 雑誌名

      Endocrine Journal

      巻: 62 ページ: 757-763

    • DOI

      10.1507/endocrj.EJ15-0260.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] アンギオテンシンIIは血管内皮細胞接着経路を介して血行性癌肺転移を増悪させる2016

    • 著者名/発表者名
      石兼真,細田洋司,野尻崇,徳留健,水谷哲也,今道力敬,河邉真也,豊平由美子,柳原延章,宮里幹也,宮本薫,寒川賢治
    • 学会等名
      第89回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-03-09 – 2016-03-11
  • [学会発表] フラボノール配糖体によるカテコールアミン分泌と生合成への影響:ウシ副腎髄質細胞での研究2016

    • 著者名/発表者名
      李暁佳,豊平由美子,堀下貴文,高橋圭太,石兼真,吉永有香里,上野晋,筒井正人,柳原延章
    • 学会等名
      第89回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-03-09 – 2016-03-11
  • [学会発表] フラボノイドであるアピゲニンとルテオニンのカテコールアミン動態に及ぼす影響2016

    • 著者名/発表者名
      豊平由美子,李暁佳,吉永有香里,馬場宏佳,松田有希,石兼真,柳原延章
    • 学会等名
      第89回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-03-09 – 2016-03-11
  • [学会発表] 高転移性子宮肉腫モデルの確立とその解析2015

    • 著者名/発表者名
      河邉真也,水谷哲也,石兼真,Miguel Ernesto Martinez,清野泰,三浦浩一,細田洋司,今道力敬,寒川賢治,宮本薫,吉田好雄
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] アンギオテンシンIIによる血行性癌転移増悪メカニズムの解明2015

    • 著者名/発表者名
      石兼真,細田洋司,野尻崇,徳留健,水谷哲也,今道力敬,河邉真也,豊平由美子,柳原延章,宮里幹也,宮本薫,寒川賢治
    • 学会等名
      第68回日本薬理学会西南部会
    • 発表場所
      海峡メッセ下関(山口県・下関市)
    • 年月日
      2015-11-21
  • [学会発表] ヒト子宮肉腫の高肺転移モデルマウスの確立とその解析2015

    • 著者名/発表者名
      河邉真也,水谷哲也,石兼真,吉田好雄,宮本薫
    • 学会等名
      第74回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(愛知県・名古屋市)
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
  • [学会発表] 血管内皮細胞におけるアンジオテンシンIIシグナルは癌転移を増悪させる2015

    • 著者名/発表者名
      石兼真,細田洋司,野尻崇,徳留健,水谷哲也,河邉真也,今道力敬,宮本薫,宮里幹也,寒川賢治
    • 学会等名
      第33回内分泌代謝学サマーセミナー
    • 発表場所
      柳川藩主立花邸 御花(福岡県・柳川市)
    • 年月日
      2015-07-09 – 2015-07-11
  • [学会発表] 心房性ナトリウム利尿ペプチドのアンジオテンシンIIにより誘発されるメラノーマ肺転移増悪に対する抑制作用2015

    • 著者名/発表者名
      石兼真,水谷哲也,細田洋司,徳留健,野尻崇,三浦浩一,木村亨,秋武義治,河邉真也,今道力敬,宮里幹也,寒川賢治,宮本薫
    • 学会等名
      第88回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      ホテルニューオータニ(東京都)
    • 年月日
      2015-04-23 – 2015-04-25
  • [学会発表] ANPの血管内皮細胞の接着分子制御による癌細胞の転移抑制効果について2015

    • 著者名/発表者名
      細田洋司,野尻崇,石兼真,三浦浩一,宮里幹也,寒川賢治
    • 学会等名
      第88回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      ホテルニューオータニ(東京都)
    • 年月日
      2015-04-23 – 2015-04-25
  • [学会発表] 卵巣におけるCNP分子型の同定とその遺伝子発現調節2015

    • 著者名/発表者名
      水谷哲也,河邉真也,石兼真,松村健大,今道力敬,南野直人,宮本薫
    • 学会等名
      第88回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      ホテルニューオータニ(東京都)
    • 年月日
      2015-04-23 – 2015-04-25
  • [学会発表] ヒトにおける11-ケトテストステロンの合成と役割2015

    • 著者名/発表者名
      今道力敬,矢澤隆志,河邉真也,石兼真,向井邦晃,折坂誠,水谷哲也,宮本薫
    • 学会等名
      第88回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      ホテルニューオータニ(東京都)
    • 年月日
      2015-04-23 – 2015-04-25
  • [産業財産権] 子宮肉腫と子宮筋腫を鑑別する腫瘍マーカーの開発2015

    • 発明者名
      水谷哲也、宮本 薫、河邊真也、石兼 真、吉田好雄、福田 真
    • 権利者名
      国立大学法人 福井大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2015-152893
    • 出願年月日
      2015-07-31

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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