研究課題/領域番号 |
26861322
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
津田 弘之 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40571328)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 先天性横隔膜ヘルニア / 柴苓湯 / 胎児治療 / 肺低形成 / 肺高血圧 |
研究実績の概要 |
妊娠9日目のSDラットにnitrofen 100mg/bodyを経口投与することにより、胎仔横隔膜ヘルニアモデルを作成した。薬剤治療群としては、妊娠15日目より柴苓湯0.8g/日/bodyを連日投与した。現在nitrofen単独群において、41%の胎仔において胎児の横隔膜ヘルニアを確認しており、文献上の報告(40-60%)と相違ない結果となっている。これに対し、柴苓湯投与群において、胎仔横隔膜ヘルニアの割合は25%と減少しており、横隔膜ヘルニア発症の予防効果が認められている(P < 0.05)。また、胎仔肺重量の検討においても、柴苓湯投与群では肺重量/体重量の比が改善している(P < 0.05)ことが認められた。現在得られているデータからは、柴苓湯がCDHの予防かつ肺低形成の予防効果を持つ可能性が示唆されている。また、現在「正常胎仔」・「nitrofenを投与したCDH胎仔」・「nitrofen + 柴苓湯を投与したCDH胎仔」それぞれの肺HE標本での検討を行っており、柴苓湯投与群では明らかに肺胞構造が改善していることが確認できた。さらに、胎仔の呼吸機能をみるために、出生後5分の時点で血液ガス分析を行い、柴苓湯投与群では、非治療群と比較して、有意に呼吸機能の改善(PCO2とpH)を認めている(P < 0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎児横隔膜ヘルニアモデルにおいて、柴苓湯の出生前投与が有意に横隔膜ヘルニアの発症率を低下させていること、また出生した仔においても、有意に肺の低形成ならびに呼吸機能が改善していることが示されている。ただし、まだ検体数が少ないため、さらなる検討が必要である。また、柴苓湯が胎児治療として有効かどうかは、その安全性についての評価が必要であり、その点についても今後検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの結果を踏まえ、さらに症例数を増やして検討していく。また、肺高血圧症との関連も調べていく必要があるため、肺動脈の形態学的な変化や、remodelingに関連する指標などをターゲットとした研究を進めていく予定である。今のところ、その重要な因子としてエンドセリン-1に注目している。 また、柴苓湯を胎児期に使用するため、その安全性についての検討も必要である。胎仔の体重や発育、副腎や中枢神経系への影響などにつき、検討していきたいと考えている。
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