視床下部に存在するキスペプチンニューロンはneurokinin B(NKB)を共発現し、NKBはキスペプチン分泌を促進、キスペプチンがGnRH分泌を制御するといった知見が得られている。このようにNKB、キスペプチン、GnRHはHPG axisの中枢として生殖機能を制御しているが、これらのニューロペプタイドは胎盤にも存在している。そこでラット胎盤に存在するGnRH、キスペプチン、NKBの発現について検討した。妊娠18週のラットから胎盤を取り出し、トロフィブラストを分離する方法に準じて胎盤細胞を採取し培養した。胎盤細胞におけるGnRH、キスペプチン及びNKBの発現をリアルタイムPCRで測定した。胎盤細胞をエストラジオール(E2)と共に培養するとGnRH、キスペプチン、NKBの発現はコントロールに比べて有意に増加した。胎盤細胞におけるGnRH発現はキスペプチン刺激により増加しなかったが、GnRH刺激及びNKB刺激で有意に増加した。一方、胎盤細胞におけるキスペプチン発現はGnRH及びNKB刺激で増加したが、キスペプチンはキスペプチン発現を増加させなかった。胎盤におけるhCG mRNA発現を検討したところ、E2、キスペプチン、GnRH、NKB全ての刺激で胎盤細胞におけるhCG mRNA発現が有意に増加した。胎盤においては中枢のようにキスペプチンはGnRH発現を制御していないが、これらのニューロペプタイドはE2の影響下にあり、互いに影響しあい、hCG産生など胎盤機能の維持に関与していると考えられた。
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