キスペプチンは視床下部において、GnRH産生ニューロンに存在するキスペプチン受容体Kiss1Rに結合し、GnRH分泌に関与していることが明らかにされている.また下垂体前葉ゴナドトロピン産生細胞にもKiss1Rが存在することが知られている.そこで下垂体ゴナドトロピン産生細胞におけるGnRH受容体とGPR54の関係について検討をおこなった.ラットゴナドトロピン産生細胞株であるLβT2細胞を用いてキスペプチン刺激によるLHβ,FSHβサブユニットの転写活性を測定し,GnRH受容体発現量の変化によるキスペプチンの刺激効果を比較した.LβT2細胞においてGnRHにより内因性のKiss1R発現は増加した.またキスペプチンはGnRH受容体発現を増加させ、LHβ,FSHβサブユニットプロモーター活性を共に増加させた.LβT2細胞内のGnRH受容体発現量を増加させたところ、キスペプチンによるゴナドトロピンサブユニット発現は更に増加した.Kiss1Rの発現を増加させた細胞では、LHβ,FSHβサブユニットプロモーターの基礎活性が上昇したが,GnRHに対する反応性に変化は認められなかった.以上より下垂体ゴナドトロピン産生細胞において、キスペプチンはゴナドトロピン促進作用を持つことが明らかとなった.またキスペプチンはGnRH受容体を増加させることで、GnRHあるいはキスペプチン自身によるゴナドトロピン促進作用を増強させると考えられた.一方GnRHもKiss1Rの発現を増加し,ゴナドトロピンの基礎転写活性及びキスペプチンによるゴナドトロピン促進作用を増強していると考えられた.
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