H26年度の結果から得られたLHサージにより発現が制御されるヒストン修飾酵素の中で、H3K27のメチル化酵素であるEZH2を用いて以下の実験を行った。過排卵ラットモデルを用いて、hCG投与前と、投与4、12時間後の卵巣から黄体化顆粒膜細胞を回収し、StAR、Cyp19a1遺伝子プロモーター領域へのEZH2のDNA結合が変化するかをChIP assayを用いて検討した。StAR遺伝子プロモーター領域では4時間後にEZH2のDNA結合が低下し、Cyp19a1遺伝子プロモーター領域では、そのDNA結合は増加していた。この変化は、以前我々が報告したStAR、Cyp19a1 mRNA発現とそのプロモーター領域のH3K27メチル化変化に矛盾しない結果となった。この結果から、hCG刺激により制御されたEZH2が遺伝子プロモーター領域のヒストン修飾を変化させることで、遺伝子発現制御を行っている可能性を見出した。 次に、PMSG刺激後の卵巣から回収したラット顆粒膜細胞を用いた培養系において、hCG刺激4時間後にStARプロモーター領域のH3K4のメチル化が変化し、同時にStARmRNA発現が上昇することをH26年の結果から得ていたが、この顆粒膜細胞に、hCG刺激に加えてERK阻害剤であるUO126を加えると、StARプロモーター領域のH3K4のメチル化が抑制され、さらにStAR mRNA発現が抑制されることが分かった。この結果により、hCG刺激で増加するStAR遺伝子発現は、ERK1/2経路を介しており、さらにその経路はプロモーター領域のヒストン修飾を変化させることで遺伝子発現制御を行っている可能性が示された。
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