研究課題/領域番号 |
26861329
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
前川 亮 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90598749)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | HIF2 / NRG1 / DNAメチル化 / mRNA発現 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
子宮筋腫において発症の鍵となるマスター遺伝子を検索するため、ゲノムワイド発現解析で得られた発現異常遺伝子において相互的ネットワーク解析を行って、76 のネットワークと上流遺伝子が検出された。これら76 の上流遺伝子のうち、DNA メチル化異常を有する5遺伝子に着目している。その中で、転写因子であるHypoxia Inducible Factor 2(HIF2)を上流遺伝子とした遺伝子群に特に着目して研究を進めている。この遺伝子群は低酸素応答や酸化ストレスへの反応に関与する遺伝子である。HIF2 はDNA 高メチル化・mRNA 低発現であり、下流遺伝子も低発現傾向を呈していた。このHIF2は月経中の子宮収縮により子宮筋層が低酸素に晒されると活性酸素の蓄積を招き、この活性酸素の増加がEGF pathwayを活性化させて筋腫の増殖に関与している可能性がある。 現在、HIF2発現を恒常的に抑制した子宮平滑筋細胞をウイルスベクターを用いて作成を継続しており、作成後に、1. mRNA発現マイクロアレイ解析、2. 免疫不全マウスへの移植を行う。尚、ともに5つの上流遺伝子に含まれていたNRG1(Newreglin1)はEGF receptorのリガンドとして働いていることが報告されており、NRG1が低メチル化・高発現である子宮筋腫では、NRG1がHIF2とともにEGF pathwayを活性化させて筋腫の増殖に関与している可能性が有る。そのため、我々はNRG1もHIF2と同様にNRG1を恒常的に強制発現させた子宮平滑筋細胞を作成している。NRG1の強制発現細胞の作成にはすでに成功しており、マイクロアレイ解析にて細胞外器質を構成する遺伝子の発現が上昇していることが明らかとなってきた。子宮筋腫でも同様の遺伝子群が高発現を呈しており、HIF2とNRG1がともに筋腫の増殖に関与している可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HIF2の強制発現ベクターの作成にはやや難航しているが、HIF2と共にEGF pathwayを活性化させて筋腫の増殖に関与していると考えられるNRG1の強制発現ベクターの作成には成功しており、すでに発現解析も行っている。概ね順調な進行である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、HIF2の強制発現ベクターの作成とHIF2の発現を低下させた子宮平滑筋細胞の作成を継続する。作成したのち、mRNAのゲノムワイド発現解析を行い、HIF2の発現低下が平滑筋細胞へどのように影響するかを検討する。特に低酸素環境下での影響について検討を行う。また、HIF2を強制発現させた子宮筋腫細胞についても作成を試み、HIF2の強制発現が子宮筋腫細胞の増殖へ与える影響について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
HIF2とNRG1の強制発現ベクター作成後に免疫不全マウスへの移植実験が控えており、この移植実験において比較的多くの費用を要する予定である。平成26年度の使用計画にはこの費用も含まれていたが、この強制発現ベクターの作成にやや難航していたため、移植実験にやや遅れが生じ、平成26年度で見込んだ計画の費用を使用できなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
これまでにHIF2とNRG1の強制発現ベクターの作成を行ってきた。上述のごとく平成26年度では発現ベクターの作成にやや難航していたが、方法を改良してすでにNRG1の強制発現ベクターの作成に成功した。今後HIF2の作成も完了する見込みであり、順調に免疫不全マウスへの移植実験を行える予定である。
|