研究課題
Gタンパク共役受容体(G protein-coupled receptors, GPCRs)は細胞膜7回貫通型の受容体で、リガンドが結合することにより構造変化が生じ、Gタンパクの活性化を介して細胞内にシグナルを伝達します。癌の進展には様々なGPCRシグナルが関与していることが知られていますが、近年の研究成果からGPCRだけでなく、細胞内のGタンパク自体の過剰発現や遺伝子変異も重要な役割を果たしていることが明らかとなってきました。私たちはこれまで、癌細胞の浸潤、転移におけるGPCR-Ga12/13-Rhoシグナルの役割について解析を行ってきましたが、本研究では、GPCR-Rhoシグナルが癌の進展を制御するメカニズムについてさらに詳細な解析を行っています。まず、様々な卵巣癌細胞株を用いて、Ga12/13-Rhoシグナルの活性化が細胞増殖および細胞浸潤に及ぼす影響についてin vitroの解析を行いました。その結果、乳癌細胞株や前立腺癌細胞株と異なり、卵巣癌細胞株においてはGa12/13-Rhoシグナルは細胞浸潤ではなく細胞増殖を制御していることが明らかとなりました。しかし、Ga12/13-Rhoシグナルの活性化が細胞増殖を制御するメカニズムはこれまで十分明らかにはなっていません。そこで我々は、GPCRおよびGタンパクの遺伝子変異体を用いて、G12/13シグナルだけを細胞内に再構築できる実験系を確立し解析を進めています。その結果、臓器のサイズを制御するシグナルとして知られているHippoシグナル経路の中心的分子であるYAPが、Ga12/13-Rhoシグナルの下流で活性化してることが示されました。現在、in vivoマウスモデルを用いた解析を進めています。
3: やや遅れている
卵巣癌細胞株において、Ga12/13-Rhoシグナルの活性化は、乳癌や前立腺癌と同様に細胞浸潤を制御していることを予想していましたが、興味深いことに細胞浸潤ではなく細胞増殖を制御していることが明らかとなりました。それに伴って当初の計画を変更し、卵巣癌においては、Ga12/13-Rhoシグナルが細胞増殖を制御するメカニズムについて解析を行っています。 また、GPCRのひとつであるGPR56の機能解析を行うために、GPR56の様々な遺伝子変異体の作成を行っています。しかし、遺伝子変異に伴うGPR56の3次元構造の変化が原因で、予定通りにGPR56遺伝子変異体の作成が遂行できていません。
卵巣癌細胞の増殖におけるGPCR-Ga12/13-Rhoシグナルの役割について、in vivoマウスモデルを用いた解析を進める予定です。子宮頸癌および子宮体癌についても、細胞増殖において卵巣癌細胞と同様のメカニズムが働いているかを解析する予定です。また、GPR56遺伝子変異体の作成が完了次第、GPR56の制御する細胞内シグナル伝達経路の解析を開始する予定です。さらに、婦人科癌の細胞増殖および細胞浸潤にGPR56およびGPR54シグナルが及ぼす影響についてin vitroの解析を行う予定です。
in vitroでの解析が予定より遅れており、マウスモデルを用いたin vivoでの解析が施行できていないため
in vitroでの解析が終了次第、マウスモデルを用いたin vivoでの解析を開始する予定です。
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