研究課題/領域番号 |
26861334
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
谷口 憲 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (30714232)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子宮内膜 / 抗ミューラー管ホルモン / 機能調節 / 子宮内膜発育不全 / 着床不全 |
研究実績の概要 |
本年度は,当科を受診した生殖年齢の女性において,末梢血中AMHならびに卵巣ステロイドホルモン(エストラジオール,E2;プロゲステロン, P4),甲状腺ホルモン(FT3,FT4,TSH),下垂体ゴナドトロピン(FSH,LH)を測定し,それらでAMHとゴナドトロピンの測定値から多嚢胞性卵巣症候群(PCOS),早発卵巣機能不全(POI)を診断し解析した.経腟超音波断層法により種々の月経周期の時点で子宮内膜の厚みを測定しパワードプラ法による血流評価を行った.これらで,子宮内膜の所見と血清AMH値ならびにその他の内分泌学的パラメーターとの関連を現在解析中である. インフォームドコンセントが得られた症例の一部から正所性子宮内膜を採取した.それらにおいてAMHの特異的受容体であるAMHtypeII受容体(AMHIIR),エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)の発現を免疫組織化学的手法により検討した.AMHIIRは子宮内膜腺上皮および間質に発現・局在を認め,症例により子宮内膜腺上皮における発現に差があることが認められた.現在AMHIIRの発現動態と月経周期や子宮内膜腺上皮の形態あるいは性ステロイド受容体の発現との関連を解析中である. 本年度の検討から,血中AMH値とゴナドトロピン値との関連から,排卵障害の有無あるいは排卵誘発への反応性には血中AMH値とのあいだに有意な相関があることを確認した.また,血中AMHの値から,顕性PCOSとPCOSでないその他の排卵障害が鑑別できる可能性が示唆されるデータが得られつつあり,それらの臨床的な意義について今後解析する予定である.一方,症例数は少ないながらも,子宮内膜におけるAMHIIRの組織学的発現・局在が確認された.ミューラー管由来組織である子宮内膜においてAMHが何らかの作用を持つことを示す知見である,組織学的解析系が確立できたことは次年度からの本研究の進展が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
血清AMHを測定している症例数は順調に蓄積できているが,子宮内膜組織採取においてインフォームドコンセントを得ることが難しい例もあり,内膜組織を採取し得た症例が予想より少なく目標数に達していない.また,当初早発卵巣機能不全の例で内膜採取を予定していたが,長期の無月経のため内膜が発育しておらず複数の研究解析に必要な組織量の採取が困難であった. AMHIIR mRNAの発現・局在をin situ hybridizationにより確認する予定であったが,検体数が少ないこともあり条件設定などの予備実験にとどまっている.また,組織培養実験におけるBrdU取り込み能についての解析も実際の対象症例における解析ができるレベルまでは到達していない.
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今後の研究の推進方策 |
比較的子宮内膜組織が得やすい多嚢胞性卵巣症候群や不妊症の症例を優先して子宮内膜の収集に努め検体数の増加を図る. 免疫組織化学的解析は今年度同様に進めていくが,BrdU取り込み能あるいはホルモン添加を行う組織培養実験を機器の調整や条件設定を通じて進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で使用する予定であった組織処理用の薬品,各種1次抗体,オリゴプローブならびにガラス・プラスチック消耗品の使用量が当初の予想を下回ったためである.また,本研究内容についての学会発表は行わなかったため旅費を計上する必要がなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の実施計画に沿って,引き続き次年度に行う実験で使用する予定の組織処理用の薬品,1次抗体,オリゴプローブ,測定キットの購入に充てる予定である.また,次年度は研究状況の発表や情報収集のために学会参加を予定しており,本研究費を充てる予定である.
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