顆粒膜細胞腫は、卵巣癌の一種であり、初期の発症から数十年の歳月をかけて再発・転移するという経過をたどる。そのため、早期発見、早期治療が非常に困難であり、有効な治療法は未だに確立されていない。致死率も比較的高いこと、また女性の社会進出により近年、発症率が上昇してきていることから、早急な治療法の開発が必須である。申請者は、顆粒膜細胞腫細胞株、KGN細胞および正常顆粒膜細胞との比較による差異的トランスクリプトーム解析を行い、GPRC5Bを候補分子として選別し、機能解析を行ってきた。GPRC5Bの発現制御をRNAi及びshRNAを用いて行うと、顆粒膜細胞腫細胞株の増殖能、浸潤能および運動能を抑制することを確認している。そこで、平成29年度は平成28年度に行った抗がん剤に対するスクリーニングにより明らかとなった、顆粒膜細胞腫細胞腫の増殖能、浸潤能および運動能を制御する可能性のあるシグナル伝達経路について詳細な解析を行った。本解析と平成26年度に行った差異的トランスクリプトーム解析及びそれらを用いたがんに特化したデータベース、Oncomineを利用した解析により、コラーゲンのリモデリングに関与するシグナル伝達経路が顆粒膜細胞腫の悪性化を司ることが明らかとなった。今後のさらなる解析により、新たな創薬ターゲットとして近年注目されているGタンパク質共役受容体(GPCR)の一種であるGPRC5Bを中心とした女性特異的な癌に特化した新たな創薬が期待される。
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