生殖細胞変異による遺伝的リスクが発症要因として考えられる、子宮体癌(Lynch症候群など)と卵巣癌(遺伝性乳癌卵巣癌症候群、Lynch症候群など)の既治療症例及び新規治療開始症例から、文書による同意の下、血液サンプルを採取して、白血球中のDNAを保存しました。全サンプル数は138例収集できました。 全患者中の生殖細胞遺伝子変異を有する割合は多くとも10%であることから、家族歴や年齢、多発発癌などのリスクを有する症例、摘出組織から文献的に遺伝性腫瘍を疑う病理所見を有する症例などがあれば、解析数を増やしていくために、今後も血液サンプリングは採取、保存を継続する予定です。 現、138サンプルにおいても、次世代シーケンサーの1RUNにかかるコストが大きく、全例を解析することは不可能と考えられます。背景から遺伝的ハイリスクを強く疑う4症例(1RUN)の解析で1例にBRCA2 VUSを認めるのみでした。できるだけ遺伝的リスクを有する症例数を絞り込み、遺伝子変異を有する率の高い群での解析を進める必要があるため、研究報告が多数されている遺伝的乳癌卵巣癌症候群よりも、婦人科腫瘍としての報告が少ない、Lynch症候群のリスク背景を有する群に症例を絞ることとしました。 138サンプル中、家族歴、年齢、摘出組織の病理所見からLynch症候群の背景がある、61例に絞り(コスト面から100例まで解析可能)、マイクロサテライト不安定性(MSI)検査を実施する予定で試薬を購入しました。MSI陽性症例に対して、次世代シーケンサーを用いて責任遺伝子変異を確認し、日本人における、婦人科癌を発症する遺伝子の検出を目指しています。
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