研究実績の概要 |
【諸言】我々はこれまでに卵巣明細胞腺癌においてHypoxia Inducible Factor -1(HIF-1)が高い転写活性を有し、その活性化にはヒストン脱アセチル化酵素7(HDAC7)が関与している可能性について報告してきている。一方、HIF-1の活性化や安定化には様々なHDAC family(HDACs)が関与していることが示唆されてきていることから、今回我々は、上皮性卵巣癌におけるHDACsとHIF-1の活性化との関連性について検討したので報告する。 【材料・方法】東海大学医学部附属病院産婦人科にて根治を目的に外科的に切除され、ICの得られた上皮性卵巣腫瘍68例を用い、HDAC7抗体を用いて免疫染色を行い、病理学的に陽性率を判定した。さらにHDAC7の発現の有無とOS(overall survival)との関連性について解析した。 各種卵巣癌培養株7株(漿液性:C13, 2008, 明細胞:RMG-1, HUOCA-II, HAC-2, OVISE, 顆粒膜細胞腫:KGN)を用いて、HDAC阻害剤(Vorinostat)を培地中に各濃度(1μM, 5μM)で添加し、24時間後に細胞を回収し、RNAを抽出した。その後、作製したcDNAを用いてreal time RT-PCRを行い、各HDACsならびにHIF関連因子(HIFs)の各因子のmRNA発現量の変化について解析した。 【成績】①上皮性卵巣癌ではHDAC7の高発現を認め、HDAC7陽性例は予後不良な傾向を認めた。②明細胞腺癌培養株は他の培養株に比して、HDACsならびにHIFsのmRNAの発現が高く、とりわけHAC-2, OVISEでは高発現を認めた。③HDAC6, 7, HIF-1α, VEGFの発現はどの培養株でも4因子の発現が相関していた。④VorinostatによるHDAC7ならびHIFsの発現抑制は細胞株によりその感受性は異なっており、すべての株で同様の結果を得られなかった。 【考察】平成26年度の解析により、卵巣明細胞腺癌におけるHDAC7の高発現が明らかとなり、HIF-1αの発現とともに、卵巣明細胞腺癌における予後不良因子の1つとなる得ることが示唆された。
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